フリーダム・ライターズ

2007年作品
監督 リチャード・ラグラヴェネーズ 出演 ヒラリー・スワンクイメルダ・スタウントン
(あらすじ)
ロス暴動から2年。進学校だったウィルソン高校では、政府の人種統合政策のために黒人やアジア系の生徒も受け入れることになったが、皮肉なことに学内でも人種対立はエスカレートするばかり。そんな学校に新任教師のエリン(ヒラリー・スワンク)が赴任してくるが、人種間の抗争で明日の命の保証もない生徒たちは彼女に心を開こうとしない。困った彼女は生徒たちに一冊のノートを配布し、そこに彼等の本音を書かせることにした….


ミリオンダラー・ベイビー(2004年)」に出ていたヒラリー・スワンクの熱血教師もの。いや、「ミリオンダラー・ベイビー」自体はあまり好きな作品ではないんだけど、主演の彼女にはちょっと興味があったので・・・

初めの頃、正に命がけの人種間抗争に明け暮れていた生徒達が、エリンの授業でホロコーストを知り、アンネの日記を読むことを通じて人種差別の愚かさを学んでいき、彼女の受け持つ203教室が次第に一つになっていく過程を描いている。見終わってみると、相当“出来すぎ”の感はあるんだけれど、本作は今から十数年前にあった実話を基にしている訳で、まあ、例によって“事実なんだからしょうがない”っていうことなんだろう。

もちろん万事がメデタシメデタシということではなくて、エリンの理想論に付いていけなくなった彼女の夫が家を出て行ってしまうというエピソードなんかも語られるんだけど、そんな逆境にもかかわらず自らの信念を貫く彼女の姿勢はもう“立派”としか言いようがない。俺としては旦那のほうにちょっぴり同情してしまうけどね。

まあ、2年間に及ぶ物語を2時間にまとめる必要から現実にはあったであろう“膨大な試行錯誤”を大幅に削ったため、何かエリンの努力がトントン拍子に実っていくような印象を与えてしまうんだと思うけど、やっぱりここらへんはある程度現実に目を瞑ってでも、エリン自身が決してスーパーウーマンではないという“真実”を観客に伝える工夫が必要だったんじゃないだろうか。

ドキュメンタリィとは違ってあくまでも“映画”なんだから、エピソードを現実から抽出するだけではなく、例えば最初の頃に出てくる真珠のネックレスをネタにしてエリンの弱さを表現するようなエピソードをでっち上げる、っていうことも当然許されると思うし、必要ならそうすべきだったろう。

ということで、いくら実話がベースになっているからといって主人公があまりに立派過ぎるのはちょっと考えもの。まあ、プロデュースも手掛けたヒラリー・スワンクはきっとこういうお話しが好きなんだろうけどね。それと「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(2007年)」でアンブリッジ先生を演じていたイメルダ・スタウントンが、こっちでもエリンと対立する保守的な教師役で出ているのが面白かったです。