エリン・ブロコビッチ

2000年作品
監督 スティーヴン・ソダーバーグ 出演 ジュリア・ロバーツアルバート・フィニー
(あらすじ)
3人の子持ちであるエリン(ジュリア・ロバーツ)は無職のシングルマザー。交通事故の賠償金を得るために弁護士のエド・マスリー(アルバート・フィニー)に依頼して訴訟を起こすが、法廷での彼女の暴言が原因となって敗訴。困った彼女は、エドワードの弁護士事務所に押しかけ、何とか事務員として雇ってもらえることになるが、ふとしたことから、そこで大企業による環境汚染の事実に気付く….


主演のジュリア・ロバーツが第73回アカデミー主演女優賞に輝いた作品。

法律に関しては全くの素人である女性エリンが、六価クロムによる広範囲な地下水汚染を引き起こした大企業を相手に集団訴訟を起こし、巨額の和解金を勝ち取るという、実に単純かつ痛快なストーリーであるが、驚いたことに本作は実話に基づいているそうであり、DVDの特典映像には実在するエリン・ブロコビッチご本人へのインタビューなんかも収録されている。

まあ、“実話”ということに関しては、ストーリーに説得力を持たせるという利点がある反面、脚色の自由度が相当程度制限されるという弱点を伴う訳であり、フィクションであれば当然ストーリーに大きく関わってくると思われる大企業による妨害工作みたいなものは、本作にはほとんど登場しない。

その代わりに本作で大きく取り上げられているのは、主人公エリンのユニークなキャラクターであり、その悪趣味一歩手前みたいな派手なファッションと口の悪さは天下一品。この役柄を、公開当時33歳と、プロポーション的には下り坂に差し掛かりつつあったであろうジュリア・ロバーツが体当たりで演じているのだが、ハイヒールでの歩き方一つを見ても、ハリウッド女優の片鱗も感じさせないくらい庶民的(?)であり、彼女のアカデミー主演女優賞は決して伊達ではなかったと思う。

また、相手役であるアルバート・フィニーのベテランらしい受けの演技も素晴らしく、その懐の広さが本作の心地よい緩衝材になっている。実をいうと、スティーヴン・ソダーバーグが監督を務めていることについてはクレジットを見るまで知らなかったのだが、彼がこんなに器用な人だというのはちょっと嬉しい驚きであった。

ということで、Sheryl Crowの“Everyday Is a Winding Road”で幕を閉じる本作はとても爽快な娯楽映画になっている訳であるが、我が国では実際に起きた公害問題をこんな風にさらっと映画化できるとはとても思えず、このへんの差は一体何なんだろうとちょっと悩んでしまいました。