進め竜騎兵

1936年作品
監督 マイケル・カーティス 出演 エロール・フリンオリヴィア・デ・ハヴィランド
(あらすじ)
19世紀中頃のインド。英国軽騎兵部隊の隊長であるジェフリイ・ヴィッカース大尉(エロール・フリン)には美しい婚約者のエルサ(オリヴィア・デ・ハヴィランド)がいたが、彼の不在中に彼女は彼の弟と愛し合うようになってしまう。一方、その頃、英国の植民地政策に不満を持つインドの豪族カーンはロシアと手を結び、ジェフリイが警護するチュコテイ砦への攻撃を計画していた….


エロール・フリンオリヴィア・デ・ハヴィランドといえば、あのカスター将軍の活躍(?)を描いた「壮烈第七騎兵隊(1942年)」と同じコンビ。舞台は全く異なるが、両方とも一応“史実”に基づいており、騎兵隊が出てきたり、ラストで主人公が壮絶な戦死をとげるあたりもよく似ている。

監督が職人肌のマイケル・カーティスということで、恋あり戦闘ありと盛り沢山の内容。チュコテイ砦の攻防の際にカーンの卑劣なだまし討ちによって女子供を含む多大な犠牲者を出してしまったジェフリイ君であるが、数年後、彼は圧倒的に不利な状況下、上官の命令に反してカーンの属するロシアの砲兵隊陣地に攻撃を仕掛け、見事に積年の恨みを晴らすことに成功! ここでの軽騎兵部隊の突撃シーンはなかなか迫力があります。

そんな訳で、とりあえずはメデタシメデタシの結末になるんだけれど、うーん、やっぱり命令違反は不味いんじゃないのかなあ。まあ、結果的に奇襲作戦は一定の成果を収めたようだし、後日、上官がジェフリイの行動を不問に付すような描写もあるんだけど、彼に騙されて道連れにされた600余人の軽騎兵部隊の皆さんは堪ったもんじゃないでしょう。

このシーンのモデルとなったバラクラバの戦いはクリミア戦争の際に行われたもので、実際に軽騎兵部隊を率いていたのはジェイムズ・カーディガン伯爵(=あのカーディガンの語源になった。)という人。彼はどうもあまり有能な指揮官ではなかったようで、この戦闘も英国軍の指揮命令の混乱から彼が勘違いをして勝手に突っ込んで行っちゃったというのが本当のところらしい。

ということで、本作はこのバラクラバの戦いを題材に英国の詩人がでっち上げた英雄譚がベースになっているんだけれど、祖国の犯した過去の過ちを美化したくなる心情というのは洋の東西を問わないようである。カスター将軍役と同様、エロール・フリンの異様なまでに端正なお顔立ちはこういった狂信者役に怖いほど似合っていました。