イタリア旅行(第7日目) ローマ観光(その1)

長かったイタリア旅行もいよいよ終盤。午前中は、お待ちかねのヴァチカン美術館とサン・ピエトロ寺院の見学です。

◎ヴァチカン美術館

ヴァチカン市国にある歴代ローマ教皇の収集品を収蔵展示する世界最大級の美術館。実態は新旧様々な美術館の複合体であり、ミケランジェロの「最後の審判」があるシスティーナ礼拝堂が最も有名であるが、その他にも「ラオコーン」のあるピオ・クレメンティーノ美術館や「アテナイの学堂」で有名なラファエロの間等々、見どころ満載である。
さて、朝イチでヴァチカン美術館に向かうが、美術館の入口はすでに観光客の長蛇の列。我々団体客は別途予約してあるとのことであるが、それでも30分くらい待たされてようやく入場できた。最初、現地ガイドの方の「最後の審判」に関する講義を10分くらい聞かされてから中庭に降り、巨大な松ぼっくりのところにある入口から入館。タペストリーのギャラリーや地図のギャラリーを通り抜け、ラオコーンもラファエロもみ〜んなパスして、一路システィーナ礼拝堂へ!

システィーナ礼拝堂

天井の高い、ガラーンとした感じの部屋にミケランジェロの祭壇壁画「最後の審判」と天井画「創世記」、左右の壁面には3日前からファンになったボッティチェッリ等によるやはり聖書をモチーフにした壁画が描かれている。
これまでミケランジェロの描く筋骨隆々の人物にはあまり馴染めず、正直なところ、ブルーノ・サンマルチノみたいなキリストが出てくる「最後の審判」も決して好きな作品ではなかったんだけど、いやー、実物のド迫力はすごい。画集なんかで見たときの印象とは大違いで、正面の壁や天井一面に躍動する人々の存在感に圧倒されます。当然のことながら、これらの作品は見る人との距離を計算して描かれている訳で、やはり“ここ”で見てみないとその本当の魅力は味わえない、ということが身にしみて分かりました。


ということで、ラオコーンやラファエロは見られなかったんだけど、システィーナ礼拝堂が予想した以上に素晴らしかったんでひとまず納得し、隣接するサン・ピエトロ寺院へと向かう。

サン・ピエトロ寺院

カトリック教会の総本山というだけあってすごいスケール。ルターが怒ったのもやむを得ないと思わず納得。有名なミケランジェロの「ピエタ(完成品!)」のほかにも沢山の美術品が飾ってあるんだけど、われわれに与えられたミッションは“15分後にコロネード中央部のオベリスクの下に集合”というこれまた非情なもので、この限られた時間内にピエタやベルニーニの大天蓋の写真を撮ったり、聖ペテロ像の右足に触ったりと大忙し。1時間とは言わないが、せめて30分は欲しかった。


なんとか時刻どおりにカリグラ帝がエジプトから運ばせたというオベリスクの下に辿り着く。この後、ヴァチカン市国を出国し、お土産屋さんを冷やかしてからバスでローマ市内観光に出発。まずはコロッセオへ。

コロッセオ

ヴェスパシアヌス帝の命により建てられた円形闘技場。とても立派なお姿で、バスの中からその威容が見えてくると思わずちょっと興奮します。今日は外観からだけの見学だが、明日の自由行動のときには中へ入ってみる予定。見学後、すぐそばにあるコンスタンティヌス帝の凱旋門のところで全員の集合写真を撮った。(もちろん別料金)


続いて、昼食のためバスでレストランに移動。途中、テルミニ駅の横を通ったので“この付近にセルヴィウス城壁の跡が残っているんだよなあ”っと思いながら車窓を眺めていると、駅前広場らしきところに城壁跡発見! 他の観光スポットからちょっと離れているため、今回の旅行での見学は諦めていたので、とっても得した気分だった。
昼食後、定番のトレヴィの泉とスペイン広場へ。途中からバスを降り、徒歩での観光になる。

トレヴィの泉

1762年に完成したバロック様式の巨大な泉。泉自体は大きくて立派なんだけど、その泉がある広場のほうは結構狭くて観光客で一杯。家族みんなで例のコイン投げをしてきたが、本当に御利益はあるのかな?

◎スペイン広場

トレヴィの泉から歩いて10分強くらい。映画「ローマの休日(1953年)」で有名になった場所だが、スペイン階段の上にある教会が改修中でちょっと見栄えが落ちたのは残念。ここから北にあるポポロ広場までまっすぐな道が伸びており、遠くにアウグストゥスオベリスクも見られた。


今日はここで解散で、この後は全員自由行動になる。歩くことが苦手という我が家の実態を考慮し、俺が決定した観光コースは以下のとおり。幸い明日も一日自由に使えるので、今日のところは近場に限ってみた。

アウグストゥス霊廟

スペイン広場から西へ歩いてすぐのところにある。当時の“地表”だったのだと思われる一段低いところに建っているんだけど、周囲はあまり整備されておらずリアルに廃墟状態。もったいないなあ。
ガイドブックによると、近くに「平和の祭壇」もあるとのことで行ってみたんだけど、なんか真っ白なモダンな建物があるだけで、それらしい遺跡が見当たらず断念。

◎コロンナ広場

首相官邸として使用されているキージ宮殿の隣にある広場。あまり広くなくて人も少ないけど、この広場の真ん中にはマルクス・アウレリウスの円柱が立っている。

◎サンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会

ローマで唯一のゴシック教会で、こじんまりとしているがステンドグラスなんかもあってとても良い雰囲気。フラ・アンジェリコの「聖母子像」等の美術品も充実している。この教会の前のミネルバ広場にはとても可愛らしいオベリスクが立っており、台座の象はベルニーニのデザインによるもの。

パンテオン

サンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会のすぐ先。アグリッパが建て、焼失した神殿をハドリアヌス帝が建て直したものであるが、その後、カトリック教会に転用されたため、古代ローマ時代そのままの形を今に伝えている。正面はギリシア神殿のような円柱が並んでいるが、内部はドーム型という斬新な構造になっており、とても今から1900年以上も昔に建てられたものとは思えない。ラファエロのお墓があるとのことであったが、どれだか分らなかった。

◎ロトンダ広場

パンテオンの正面にある広場。ここにある噴水の彫刻はちょっとユーモラスで、上にはオベリスクが乗せられている。この広場の側に添乗員さんお勧めのカフェがあり、そこの氷の入ったドリンクが絶品とのこと。でも、家族のうち誰もその正確な商品名を覚えていなかったため、俺が必死になって店員さんに説明した結果、出てきたのはただの冷たいカフェオレだった。

◎サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会

塩野七海さんの「スペシャル・ガイドブック」にも紹介されていた教会で、「聖マタイと天使」をはじめカラヴァッジョの絵3枚が見られる。電気代節約のためか、絵の保存上の問題かわからないが、普段は絵のあるところの照明は落とされており、誰かがコインを入れると明るくなる仕組みになっている。3枚とも素晴らしい作品で、こういった絵が(誰かがコインを入れてくれるのを待っていれば)無料で見られるというのは凄いことです。

◎ナヴォーナ広場

ローマ時代の競技場跡に造られた南北に細長いアリーナ状の広場。「ムーア人の噴水」、「4大河の噴水」、「ネプチューンの噴水」という三つの噴水が有名だが、ベルニーニ作の「4大河の噴水」は改修中のため、オベリスクの部分しか良く見えなかった。


ナヴォーナ広場には沢山の人が集まっており、大道芸人なんかもいてとても楽しい雰囲気。歩き疲れたこともあり、ここのバールでちょっと早めの夕食をとることにした。幸い、入ったバールには日本語メニューが用意されており、生ハムとチーズの盛合せとピザを各1人前注文。我が家の場合、これを4人で食べても残してしまうという始末で、まあ、安上がりで助かりますが。長男がカクテルを頼んだんだが、口に合わないということで俺のほうに回ってきた。歩き回った後だったせいか、なんか日本のカクテルよりも酔いが早かったような感じ。
食後、まだ余力がありそうだったので、サンタンジェロ城まで足を伸ばすことにした。酔っぱらったせいか、簡単な道順にもかかわらず途中ちょっと迷ったけれど、なんとか到着。

サンタンジェロ城

ハドリアヌス帝が自分の霊廟として建設したものが、後に軍事施設化されたもの。しかし、ベルニーニによって手前の橋の欄干に天使の彫像が並べられており、そちらから眺めたお姿はとても要塞だったとは思えない華麗な外観である。展望台にも上がってみたかったが、皆さんお疲れのようなので、今回はこの外観だけで我慢。


ここまでで、1日目のローマ市内観光は終了。サンタンジェロ城のちょっと先にあるカヴール広場のタクシー乗り場からホテルに戻った。途中、アウグストゥス霊廟の付近を通過したので、車窓から平和の祭壇を探していたら、あの真っ白なモダンな建物の中にそれらしきレリーフを発見! まあ、ここは次回の楽しみに取っておこう。

ローマで泊まったホテルはボルゲーゼ公園のさらに北側ということで、市内との行き帰りにはタクシーの利用が必須。事前学習ではローマの悪徳タクシーに関する話も少なからず耳にしたが、結果はまったく問題無しで料金も10〜15ユーロくらいと4人利用ならリーズナブル。チップはセント単位、例えば料金が12ユーロ30セントのときは、13ユーロ渡してお釣りを辞退するっていうのが普通のようで、このときに15ユーロだと何度もグラッツィエを繰り返されることになる。

ということで、今日もお腹いっぱいのスケジュールだったが、俺としてはヴァチカン美術館の見学時間があまりにも短かったのが大変に残念。実は、“ヴァチカン美術館に入場した時点で団体行動から離脱する”っていう案を前日に家族の皆様に提示していたんだが、賛同が得られなかったんだよね。まあ、子供たちはまだ(?)あまり美術品には興味がないようなので仕方ないところであるが、是非、もう一度ゆっくりと訪れてみたいところです。