静かなる男

1952年作品
監督 ジョン・フォード 出演 ジョン・ウェインモーリン・オハラ
(あらすじ)
数十年ぶりにアメリカから故郷のアイルランドに帰ってきたショーン・ソーントン(ジョン・ウェイン)は、隣家に住むメアリー・ケイト(モーリン・オハラ)に一目惚れ。周囲の協力で何とか結婚まで辿り着いたものの、彼女の兄のレッドは最初からショーンとウマが合わず、一向にメアリーの持参金を払おうとしない。彼女は持参金のない自分をとても恥ずかしく思う一方、その気持ちを理解しようとしないショーンに腹を立てる….


ということで、数十年ぶりにジョン・フォードの代表作の一つである「静かなる男」を再見。細部では一部忘れていたところもあったものの、やはりとてもおもしろかった。

まあ、今さら言うまでもないが、ショーンが、家出を図ったメアリーを列車の中から引きずり降ろしてからの十数分間というものは映画史に残る名場面であり、今見ても全く色褪せていない。ジョン・ウェインモーリン・オハラ、それとレッド役のヴィクター・マクラグレンはそれぞれにまさに適役で素晴らしい。

また、フォードが現地ロケとカラー化にこだわったことからも解るとおり、作中で描かれるアイルランドの自然の美しさは、どちらかというと単純な本作のストーリーに見事な彩りを添えている。ただ、ロケシーンがあまりに美しいため、セットに移ったときとの落差が大きいのがちょっと残念で、ここらへんは時代による技術力の差なんだろうが「ライアンの娘(1970年)」のほうが上手ですな。

それと、今回、事前に「アイルランド賛歌」を読んでいたせいもあり、ショーンとメアリーの初デートのときに天候が急変するあたりは“やっぱりねぇ”ということでとても面白かったし、カトリックプロテスタントとの宗派対立なんかも前に見たときよりも良く理解できた。特に後者については、ストーリーが深刻にならないよう、脚本上とても上手く処理されていたと言うべきなんだろうね。