お遊さま

1951年作品
監督 溝口健二 出演 田中絹代 、堀雄二
(あらすじ)
芹橋慎之助(堀雄二)はお静という女性と見合いをするが、付き添いでついてきた姉のお遊(田中絹代)のほうに一目惚れ。しかし、未亡人とはいえ嫁ぎ先で暮らしているお遊と結ばれるはずもなく、彼女からの強い勧めもあってお静と結婚することに。ところが、慎之助とお遊の気持ちを察していたお静は、その夜、“私とは形だけの夫婦でいて欲しい”と彼に懇願する….


谷崎潤一郎の小説を映画化した作品。

お遊さまに扮するのは、当時42歳の田中絹代。確かに気品は感じられるし、日射病で倒れるシーンなんかで彼女が見せる色気は相当なもんだとは思うが、やっぱり齢は隠せない。対するお静役の乙羽信子のほうは、後年は気の強いおばさん役をよく演じていたけど、この頃は信じられないくらい可憐で可愛らしい。ということで、俺だったら迷うことなくお静さまを選ぶところだが、早くに母親と死別した慎之助君はちょっとマザコンなところもあって、お遊さまに惹かれるんだろうなあ。

最初のほうはお静が可哀そうで、お遊さまの奔放な生き方にちょっと腹が立ったりするんだけど、彼女の一人息子が急死して実家に帰されるという事態が発生することにより、彼女も当時の家制度の犠牲者の一人だったということがわかる。うーん、このへんは原作の上手さなんだろうけど、とてもおもしろい。

で、その後、真実を知ったお遊さまは、あまり気乗りのしなかった再婚話を承諾して一人伏見へ行ってしまい、一方、慎之助とお静のほうも東京へ移転。なんか、二人の生活も突如侘びしくなってしまうんだけど、後半になると何故か話の展開が結構飛ばし気味になり、説明も不十分。もしかしたら、原作のほうもこのあたりからつまんなくなるのかなあ。

ということで、後半ちょっとアレな部分もありますが、谷崎文学の神髄を十分に楽しませてくれる作品でした。それと、これは叶わぬ願いではあるが、できればこの作品はカラーで見たかったなあ。初夏から秋にかけての京都近郊の風景や女優さんたち着物姿は、白黒の映像でも奇麗だったけど、総天然色でみたらきっとさらに美しかったことと思います。