今日は、妻&娘と一緒に宇都宮美術館で開催中の「ジョルジュ・ルオー展」を見てきた。
ルオーのコレクションで知られる「パナソニック汐留ミュージアム」には一度足を運んだことはあるが、一度に見られる作品数はそう多くはなく、ちょっぴり期待外れ。そんな美術館のコレクションが大挙して宇都宮まで来てくれるとあっては見逃す訳にいかず、あまり興味の無さそうな妻&娘を誘って美術館へ。
さて、宇都宮市におけるルオー人気はそれ程でもないらしく、館内はいつにも増して閑散としていたが、まあ、おかげですべての作品をゆっくり見て回れるのは有り難い。二十代の頃の作品も1、2点展示されていたが、それ以外はぶっとい黒の輪郭線が印象的ないつもの作品であり、うん、やっぱりルオーは良いなあ。
特に嬉しかったのは、彼の代表作の一つである版画集「ミセレーレ」が58点全部見られたことであり、一枚一枚に添えられた彼のメッセージと一緒に単純なモノクロの作品を眺めていると“やっぱりキリストは人類を救えなかったんだなあ”という思いがヒシヒシと伝わってくる。
勿論、これはキリストのことを批判しているのではなく、“幸せになって欲しい”という彼の切なる願いに応えることが出来なかった人類の傲慢さを悲しんでいる訳であるが、俺にはルオーの描くこの自信無さそうに俯くキリストの姿こそが彼の本質を最も良く表しているように思える。
ということで、ルオー初体験の妻&娘はもっとカラフルな色使いの作品の方が気に入ったようであり、確かに死の2年前に描かれたことになる「マドレーヌ」は華やかな色使いが黒の輪郭線を圧倒するような勢い。とても80過ぎの老人の作品とは思えないが、これが彼の幸せな晩年を意味しているのだとすれば、とても喜ばしいことだと思います。