クリムト展とオクトーバーフェスト

今日は、妻&娘と一緒に東京都美術館で開催中の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を見てきた。

開催前から娘が見てみたいと言っていた展覧会なのだが、既にオープンから1月余が経過しており、そろそろ観覧者数もピークを過ぎた頃だろう。ついでに飲食関係で何か希望はないか尋ねたところ、日比谷公園で開催されている「オクトーバーフェスト」が面白そうということで、いざ東京へ。

さて、東京都美術館には午前10時前に着いたのだが、会場に入るまで20分弱待たされたものの、展示場内の人混みはそれ程ではなく、列に並んだり、追い越したりしながら比較的自由に鑑賞することが出来る。6年前にも宇都宮美術館で催されたクリムト展を見ているが、さすがに展示内容の充実度はこちらの方がずっと上。

もちろん一番のお目当ては「ユディトⅠ」であり、クリムトらしい金箔による装飾の施された女性像はとても魅力的。彼の“黄金様式の時代”を代表する作品の一つということで写真等では何度も見たことがあるのだが、実物を見ると、官能的な表情を見せる女性ヌードのしなやかさと背景と一体化したかのように見える平板な衣装等との対比が一際目立つ。

それによって生み出される“遠近感の不安定さ”みたいなものが本作の大きな魅力の一つであり、きらびやかな背景に捕われそうになりながら、男性的な顎のラインを見せて自己の存在を力強くアピールしているユディトの姿は、頽廃的というのか両性具有的というのか良く分からないが、いつまで見ていても見飽きない独特の美しさを有している。

それに続くハイライトは巨大な「ベートーヴェン・フリーズ」であり、6年前のクリムト展でも紹介されていた作品だが、それを国内で見られるのは望外の喜び。もちろん実物の原寸大複製だが、とても良く出来ているので俺のような素人には本物との区別は出来ず、その圧倒的な迫力の前に思わず後ずさりしてしまいそうになる。

周囲の方々が装着している音声ガイドからはベートーヴェン交響曲第9番のメロディが漏れ聞こえてくるためBGM効果もバッチリであり、全長34mに及ぶという壁画をゆっくり見て回る。ちなみに正面に描かれていた大猿はキングコングではなく、ギリシャ神話に登場するテュフォーンという化け物であるとのこと。

これら以外にも可愛らしい「ヘレーネ・クリムトの肖像」や「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」、風景画の「アッター湖畔のカンマー城Ⅲ」といった興味深い作品が多数展示されているが、最後の方に出てくるのは「女の三世代」、「家族」といった“死”を連想させる諸作品であり、ちょっぴりシミジミとした気分になりつつ館外へ出る。

さて、すっかりお腹も空いてきたので「オクトーバーフェスト」を目指して日比谷公園に向う。しかし、ちょうどお昼時だったこともあって仮設テント内の席は満席であり、仕方がないので屋外のベンチに腰を下ろして飲食開始。本場のドイツビールを飲みながらソーセージ、ポテト、生ハム、ザワークラウトといった料理を次々に頬張っていく。

しかし、元々アルコールは強い方ではないし、それに加えて30°を超える真夏のような日差しのせいですっかり酔っ払ってしまい、おそらく1時間くらい居ただけでギブアップ。あまり妻&娘の面前で酔態を晒したことは無かった故、少々心配をお掛けしてしまったようだが、何とか電車を乗り継いで無事に帰宅することが出来た。

ということで、これからの老後の楽しみの一つに“酒”を考えているところであり、(ちょっと暑すぎたのが難点だが)今日の屋外でのオクトーバーフェストはとても面白かった。幸い、娘もようやくアルコール類に興味を示し出したようであり、これからもちょくちょくこういった機会を設けたいと思います。