ワールズ・エンド/酔っぱらいが世界を救う!

2013年作品
監督 エドガー・ライト 出演 サイモン・ペッグニック・フロスト
(あらすじ)
ハイスクール時代に不良仲間のリーダー的存在だったゲイリー・キング(サイモン・ペッグ)も、今や薬物依存症の中年男。昔果たせなかった伝説の“ゴールデン・マイル”の夢に再度挑戦すべく、アンディ(ニック・フロスト)等ハイスクール時代の悪友4人を引き連れて生まれ故郷の町ニュートン・ヘイヴンに帰ってくるが、そこではある思いもよらないような恐ろしい事態が静かに進行していた….


ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!(2007年)」に続くエドガー・ライトサイモン・ペッグニック・フロストのトリオによるオバカ映画。

ゴールデン・マイルというのはニュートン・ヘイヴンにある12軒のパブの飲み歩きのことらしく、その最後にあるパブの名前がワールズ・エンド。ゲイリー達は、昔、ハイスクールの卒業式の日に一度挑戦しているのだが、まあ、経験不足ということもあってそのときは途中敗退している。

それから20年、ダメ男のゲイリーは再びワールズ・エンドを目指すことを決心するのだが、その店の名前が“世界の終わり”であることからも分かるとおり、単なるノスタルジーというより多分に自暴自棄な気分に支配されているようであり、途中で飽きてしまった他の4人を尻目に、あくまでもワールズ・エンドに行き着くことに固執する。

まあ、そんなストーリーでも十分に一本の作品として成立しそうであるが、それで終わらないところがこのゴールデン・トリオの凄いところであり、あるささやかな出来事をきっかけにして一気にSFスプラッター映画へと大変身。ラストでは、宇宙からの訪問者である“ネットワーク”の陰謀から地球を救うことに見事成功するのだが、その方法が“地球人のダメさ加減をひたすら訴える”というのも新機軸であり、笑うのを忘れて思わず感心してしまった。

サイモン・ペッグの可笑しさは、まあ、いつもどおりであるが、今回、ニック・フロストが新たな一面を見せてくれているのがなかなか興味深い。5人組の中の“デブ”といえば、一般的にお荷物的なイメージが強いのだが、彼の演じているアンディは友人思いの頼りになる好人物であり、アクションシーンも立派にこなしていた。

ということで、現実の世界では今でもネットワークの陰謀が進行中であり、俺の住んでいる地方都市でも着々と“スタバ化”が進んでいる。どこでも同じサービスが受けられるのは便利である反面、趣味や嗜好の画一化を強いられるのは社会に適応できない少数派にとっては死活問題であり、ネットワークに対するゲイリーの“放っておいてくれ”という叫びには、とても重い意味が込められているのだと思います。