天地明察

2012年作品
監督 滝田洋二郎 出演 岡田准一宮崎あおい
(あらすじ)
江戸幕府の碁方の家に生まれた安井算哲(岡田准一)は、本業である碁打ちの修行のかたわら、大好きな天体観測や算術の研究に精力的に取り組んでいた。そんな彼に目を付けた将軍の後見人である会津藩主の保科正之は、“北極出地”の困難な旅から帰還したばかりの算哲に対し、平安時代以来800年の長きに渡って使われてきた宣明暦を見直すという“改暦”の大事業を命じる….


妻のリクエストにより、江戸時代の天文暦学者である渋川春海の半生を描いた作品を鑑賞。

といっても、内容は史実とかなり異なっているらしく、例えば、北極出地を行ったのは伊能忠敬であり、本作で良き協力者として描かれている関孝和とは実際はライバル関係にあったらしい。しかし、そういった作品を面白くするための“工夫”は大歓迎であり、事実、北極星の見える角度を計測するために全国各地を旅するという北極出地を描いたシーンはとても面白かった。

それに対して、本作のメインテーマとなる改暦作業の方は映像的にかなり地味。それを補うため、あまり必要性が感じられない水戸光圀を登場させてみたり、改暦を阻もうとする一味による夜襲シーンを取り入れてみたりといろいろな工夫をしているのだが、本来、“知的”な作品であるべき本作からすると、そういった努力は目指す方向が完全に間違っており、見ていてシラケてしまう。

正直、そんな時間があるのなら、宣明暦と貞享暦とはどこがどう違っていて、それが日蝕の予測にどのような影響を及ぼすのか等を分かり易く映像で説明すべきであり、それが上手く出来ていれば観客の知的好奇心を満足させる良質な娯楽作品になっていたと思う。

まあ、本作の脚色に当たり、そんなめんどうくさい説明は観客にウケっこないという判断があった可能性も高いのだが、もしそうなのだとすれば本作の映画化は最初から見送るべきであり、代わりに伊能忠敬の北極出地の方をメインテーマにして映画化すべきだったろう。

ということで、最初の方で、主人公の安井算哲(=後の渋川春海)の出題した和算の問題が“誤問”だったにもかかわらず、関孝和がそれを好意的に受け取るという気になるエピソードが出てくるのだが、その理由についても、結局、明かされないまま。原作を読んでみれば判るのかもしれないが、なかなかその気になれないのは何故なのでしょうか。