ダラス・バイヤーズクラブ

2013年作品
監督 ジャン=マルク・ヴァレ 出演 マシュー・マコノヒージャレッド・レトー
(あらすじ)
1985年のテキサス州ダラス。ロディオが生き甲斐であるロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は、ある日、突然医師からからエイズのため余命30日と宣告される。最初はエイズに罹るのは同性愛者だけといった誤った知識しか持ち合わせていなかった彼であるが、必死になって調べていくうちに臨床試験中の未承認薬AZTの存在を知り、違法な手段によってそれを入手するのだが….


アメリカの地方紙に掲載された実在するエイズ患者の記事を基に製作された作品。

題名から、麻薬シンジケートを舞台にしたクライムサスペンス的な内容を想像していたのだが、本作に登場するダラス・バイヤーズクラブが取り扱っているのはエイズの未承認薬であり、アメリカの薬事行政、特にそれを所管しているFDA(米国食品医薬品局)を鋭く批判した社会派作品だった。

さて、何とかAZTを手に入れたものの、その副作用に苦しんだロンはあるメキシコ人医師(=免許は既に剥奪されている。)に出会い、HIVウィルスを殺す劇薬のAZTではなく、エイズの進行を遅らせるメキシコ製の薬品を勧められる。それによって小康状態を取り戻した彼は、会員に対して外国製のエイズの未承認薬を無料で頒布するというダラス・バイヤーズクラブの立ち上げを思いつく。

もちろん、このような形態をとったのはアメリカの薬事法の網の目を潜り抜けるためであり、会員になるためには月額400ドルの会費を支払わなければならない。この金額がダラスの一般庶民にとって高いのか安いのか俺には判らないが、少なくとも大金持ちにしか払えない金額ではないようであり、おそらくロンの狙いも金儲けとボランティアの中間くらいというところなんだろう。

まあ、本作で目の敵にされているFDAにもそれなりの言い分はある筈であり、特に国民皆保険制度のために新薬の承認が即保険財政のひっ迫に繋がりかねない我が国ではなおのこと。本作で描かれたロンの行為には拍手を送りたいが、現実の未承認薬の中身は玉石混淆であり、やはり一定の規制は必要だろうと思う。

ということで、ジャン=マルク・ヴァレの演出はとてもスピーディーなのだが、要所要所で観客にもっとじっくり考えさせるような配慮も必要であり、テーマの割には少々重厚さが不足していたような気がする。しかし、BGMに使われていたTレックスの選曲は最高であり、いつまでも聴いていたいような気分にさせてくれました。