アンジェラの灰

1999年作品
監督 アラン・パーカー 出演 エミリー・ワトソンロバート・カーライル
(あらすじ)
アメリカンドリームの夢に破れ、4人の子供たちを連れてアメリカからアイルランドに戻ってきたマラキ(ロバート・カーライル)とアンジェラ(エミリー・ワトソン)の夫婦。妻の実家のあるリムリックで新たな生活を始めるが、北アイルランド出身のマラキに対する世間の風当たりは強く、貧しい暮らしと湿気の多い気候のせいで幼い双子の息子が相次いで息を引き取ってしまう….


ピューリッツアー賞を受賞したフランク・マコートによる回想録の映画化。

アメリカから帰国する前に生まれて間もない女の子が亡くなっているため、5人兄弟のうち3人までが次々と命を落としていくことになるのだが、そのような苛酷な生活環境の中でも逞しくスクスクと成長していくのが長男のフランクであり、そんな彼の目を通してアイルランド人の厳しい生活の様子が綴られていく。

ほとんど父親の失業保険だけで生計を立てている彼の家庭は、貧しいアイルランド社会の中でも一際みじめな状況にあるのだが、それに加えて“アメリカ生まれ”、“北アイルランド出身者の子”という2つの大きなマイナス要素を背負わされたフランク少年は、学校でもイジメの格好の標的になってしまう。

145分の上演時間中、そんな悲惨なストーリーが延々と続く訳であるが、それでいて見続けるのが苦痛にならないあたりが本作の素晴らしいところ。その大きな要因になっているのが、どんなに苦しくても決して泣き顔を見せないフランク少年の“ふてぶてしさ”であり、彼の幼少期を演じている2人の子役はいずれもとても素晴らしかった。

また、彼を取り巻く人々の中にも味わい深いキャラの持ち主が多く、怒っているような厳しい表情の下に隠された彼等の優しさが印象的。これがアイルランド気質なのかどうかは知らないが、“キリストがリムリックに生まれていたら、湿気の多い気候のせいで若死していただろう”という趣旨のフランク少年の作文が学校で高く評価されるというエピソードはとても面白かった。

ということで、アラン・パーカーは俺の最も好きな監督の一人なのだが、改めて彼の作品リストを眺めてみると、これまで見逃していた作品が少なくないことにちょっと吃驚。折角の機会なので、彼の未見の作品を集中的に見てみようと思います。