表銀座縦走・・・ならず(2日目)

今日は、大天荘を出発し、西岳経由で槍ヶ岳山荘を目指す予定。

夕べは、雨や風がテントを叩く音のせいであまり良く眠れなかったのだが、午前3時頃に目が覚めてしまったため、明かりをつけてテント内の荷物整理を始める。外の風雨はまだ収まっていないようであるが、カップラーメンの朝食を食べたり、インスタントコーヒーを飲んだりしてゴロゴロしているうちに次第に小止みになってきた。

今がチャンスと、カッパの上下を身に付けて外に飛び出し、素早くテントを分解してザックに収納。その上からレイン・カバーを被せてしまえば作業完了であり、(このときは)予定どおりスムーズに撤収できたことに満足して、5時35分にテント場を後にする。

周囲は昨日以上に真っ白であるが、幸い風の強さはそれ程でもなく、ガレた斜面に付けられた狭いトラバース道を下って大天井ヒュッテ(6時10分)まで下りて行く。その先のルートは木立ちの中に続いており、色々な花が咲いているのが見られるのだが、雨脚が強まってきたこともあり、それらをゆっくり愛でるような心の余裕は湧いてこない。

ビックリ平(6時42分)の先からは再び稜線歩きとなり、晴れていれば最高の気分なんだろうが、雨中とあってはやはり楽しさは昨日の半分以下。それでも記録だけは残しておこうと“赤岩岳山頂50m”の標識を写真に収めようとしたが、何故かスマホが反応しない。

実は、カッパの右ポケットに入れておいたのだが、そこのチャックをきちんと閉めておかなかったために隙間から雨水が浸入し、その中でスマホが“水没”してしまったらしい。電話やメールの他、時計やカメラの役割を担っていただいていたスマホの故障はダメージが大きいが、雨の中では何にも出来ず、とりあえずビニール袋に入れて密封しただけで先に進む。

さて、ヒュッテ西岳の手前に西岳山頂へ向かう分岐(8時10分)があり、どうしようか真剣に悩んだが、結局、当初の予定どおり、ここにザックをデポして山頂を目指すことにする。ルートの一部はハイマツやシャクナゲで覆われていたが、カッパを着ているおかげで全く気にはならず、8時19分に西岳山頂(2758m)に到着。写真も撮れないため、山名板にタッチしただけで、さっさと引き返す。

ヒュッテ西岳(8時28分)でスマホの状態を調べてみたかったのだが、コーヒー等を注文しても食堂には入れてもらえないということで、あっさり断念。軒下で小休止させて頂いてから水俣乗越まで下りて行くが、途中でザックの背負い心地がどこか不自然なことに気付く。降りしきる雨の中、ザックを下ろして調べてみると、何と、ザックの左側が縦に大きく裂けている!

サイドのストラップを締め直して応急処置を行い、中の荷物が飛び出さないことを確認してから、再び水俣乗越に向けて梯子や鎖場を慎重に下りて行く。何とか無事にたどり着いた水俣乗越(9時26分)でザックを下ろし、改めて破損状況を確認するが、左側は完全に裂けており、上下2本のストラップだけで中の荷物が抑えられているという状態。

今朝、雨のテント場でパッキングをした際、調整ストラップの締め付けが十分でなかったせいで、ザックの布地自体に力がかかってしまい、裂けてしまったのだろう。それでも、縦走を続けたい気持ちはまだ30%くらい残っていたのだが、居合わせた単独行の男性から、この先も明日の午前中まで天気の回復は見込めないという話を聞き、ここで撤退を決意。

時間的には、槍ヶ岳山荘を目指すより相当かかることになるが、ここから槍沢に下りて行けば、最終バスが出る前には上高地に着けるだろう。先ほどの男性に別れを告げ、浮石の多い歩きづらいルートを下っていくと、約30分くらいで見覚えのある“槍沢大曲り”の標識(10時9分)のところに着き、ホッと一安心。

ここから先は昨年も歩いており、槍沢ロッヂ(10時52分)の衛星電話で南安タクシーに予定変更の連絡をした後、横尾〜徳沢園〜明神と歩いて、14時59分に上高地に到着。そこからバスに乗って沢渡の茶嵐駐車場に着くと、ちゃんとマイカーが届いており、それに乗って無事帰宅することが出来た。

ということで、憧れの表銀座縦走は残念な結果に終わってしまったが、その原因は一にも二にも俺の経験不足。特に、テント泊装備であれだけ激しい雨の中を長時間歩いたのは今回が初めてであり、まあ、復旧費用が相当かかりそうなのは気が重いが、これも良い経験ということにしておきましょう。