花咲ける騎士道

1952年作品
監督 クリスチャン=ジャック 出演 ジェラール・フィリップジーナ・ロロブリジーダ
(あらすじ)
18世紀のフランス。遊び相手との結婚を迫られたファンファン(ジェラール・フィリップ)は、ジプシー娘の“軍人になれば王女様と結ばれる”という占いを信じ、たまたま街に来ていた募兵官のところへ行って契約書に署名してしまう。実は、そのジプシー娘の正体は募兵官の娘アドリーヌ(ジーナ・ロロブリジーダ)だったのだが、だまされたことを知った後も彼は王女と結婚できるという占いを信じて疑わなかった….


ジェラール・フィリップ主演のフランス製剣戟映画。

主人公は“ファンファン・ラ・チューリップ”というちょっと信じ難い名前を持ったプレイボーイであり、女性にはモテモテのうえ、剣の腕も一級品。たまたま王女を乗せた馬車が山賊に襲われている現場に出くわし、賊を追い払って王女を救出したことからインチキ占いの内容をますます信じ込んでしまい、ある夜、王女に会うためにお城に忍び込んだところを逮捕され、国王ルイ15世から死刑の宣告を受けてしまう。

まあ、内容は喜劇なので、主人公のファンファンがそのまま死刑になる訳はなく、最後はひょんなことから戦場で大手柄を上げ、ちょっと捻った形ではあるが例の占いのとおり目出度く“王女”と結ばれてハッピーエンド。ファンファンはプレイボーイではあるものの、自分の感情に素直な好青年として描かれており、老獪なルイ15世の変わり身の早さと好対照となっている。

このファンファンに扮するのが公開当時30歳になるかどうかというジェラール・フィリップであり、これまで見てきた諸作品における悲劇的なキャラクターとは全く別の一面を見せてくれる。相当スタントマンも使っているのだろうが、彼の剣さばきもなかなか見事なものであり、時折見せるジャッキー・チェンカンフー映画の如きコミカルな動きもとても楽しい。

最初、ファンファンを騙したにもかかわらず、次第に彼に魅かれていく娘アドリーヌ役のジーナ・ロロブリジーダをはじめ、共演者の方も粒ぞろいであり、なかでもファンファンの恋のライバルとなるイジワル軍曹に扮したノエル・ロクヴェールのユニークな御面相とポンパドゥール夫人役のジュヌヴィエーヴ・パージュの気品ある美貌は一見の価値がある。

ということで、これまでジェラール・フィリップというのは女性向けの俳優だと思っていたのだが、本作における嫌みのない二枚目ぶりは男の俺から見ても十分に魅力的。しかも、繊細で知的なところも兼ね備えているということであれば、正に鬼に金棒と言ったところでしょう。