白痴

1946年作品
監督 ジョルジュ・ランパン 出演 ジェラール・フィリップエドウィジュ・フィエール
(あらすじ)
久しぶりに故国ロシアに戻ってきたムイシュキン公爵ジェラール・フィリップ)は、遠縁に当たるエパンチン将軍の屋敷を訪れる。そこでは、将軍の末娘であるアグラーヤと資産家トーツキイとの縁談の話が進められており、トーツキイの妾であるナスターシャ(エドウィジュ・フィエール)は、厄介払いのため将軍の秘書ガーニャに嫁がされることに….


公開当時24歳のジェラール・フィリップが映画界で注目されるきっかけとなった作品。

ドストエフスキーの長編の映画化であるが、上映時間はわずか97分であり、以前拝見した黒澤版「白痴(1951年)」の166分に比べても1時間以上短い。そのため、登場人物は極めて限定されており、イポリートは当然、レーベジェフさえ出てこない。

脚本を担当しているのは才人のシャルル・スパークであり、この限られた時間内でムイシュキン、ロゴージン、ナスターシャそしてアグラーヤの4人による四角関係を要領よく説明していると思うが、ムイシュキンとロゴージンとが初めて顔を合わせるのが例のナスターシャの夜会になっている等、本作を見ただけでこの4人の複雑な人間関係を理解しようというのはあまりにも無謀。本作を十分に楽しむためには、やはり事前に原作を一読しておく必要があるように思う。

そんな(観客にとって)不利な状況を相当程度緩和してくれているのが、主演のお二人の魅力であり、ムイシュキン公爵に扮しているジェラール・フィリップのクセのない二枚目ぶりは、公爵の精神性の高さを一目で観客に理解されてくれる。また、ナスターシャ役のエドウィジュ・フィエールという女優さんは、これまで全く意識したことが無かったものの、その美しさは超一流。俺のイメージするナスターシャに正にピッタリだった。

それに比べて残念だったのが、アグラーヤ役のナタリー・ナッティエ。彼女のちょっと個性的な顔立ちは、確かにアグラーヤの意志の強さを現しているのだろうが、それだけでは全く不足であり、同時に初々しい華やかさを伴っていなければならないと思う。

ということで、allcinemaでエドウィジュ・フィエールのプロフィールを調べてみたところ、ジャン・コクトークロード・オータン=ララの監督作品等、なかなか興味深い作品に出演していることが判明。機会があれば是非拝見させて頂きたいと思います。