廃墟の群盗

1948年作品
監督 ウィリアム・A. ウェルマン 出演 グレゴリー・ペックアン・バクスター
(あらすじ)
銀行を襲ったストレッチ(グレゴリー・ペック)の一味は、追手から逃れるために砂漠地帯へと足を踏み入れる。のどの渇きと闘いながら、数日後、彼等は命からがらイエロー・スカイという街に辿り着くが、そこは既に廃墟と化しており、わずかに老人と孫娘のマイク(アン・バクスター)の二人だけが住んでいた….


リチャード・ウィドマークが出演している西部劇。

彼が扮するデュードはストレッチの仲間の一人であり、老人達が廃墟の街を離れずにいることに疑問を持ち、彼等が金塊を隠し持っていることを嗅ぎつける。しかし、その金塊の分配方法をめぐり、老人達に半分残すべきと主張するストレッチは他の仲間たちと対立。両者の間で撃ち合いが始まってしまう。

ストレッチ一味は全員銀行強盗なんだけど、根は善人のストレッチ、悪人だけどちょっとインテリジェンスを感じさせるデュード、根っからの悪党のレングシー、そしてその他大勢の4種類に大別され、最終的にはストレッチ、デュード、レングシーの3人の撃ち合いによって決着がつく。まあ、誰が勝ったのかはご想像のとおり。

グレゴリー・ペックは、元々あまり器用な俳優さんではないので、銀行強盗一味のボス役をちゃんとこなせるのかちょっと不安だったが、最初の方から実は誠実なキャラであることを垣間見せながらの演技だったこともあって、特に違和感はなかった。

リチャード・ウィドマークは、デビュー作の「死の接吻 (1947年)」の翌年の出演であるが、昔の恋人に撃たれた弾がまだ体内に残っているという設定のちょっとロマンチックな役どころ。砂漠の真ん中にいるのにもかかわらず、ヒゲを剃ったりして身だしなみに気をつけるところがとても面白く、これって監督の指示というより、彼自身のアイデアのような気もするんだけど、本当のところはどうなんだろう。

また、紅一点のアン・バクスターが演じるのは、アパッチと一緒に育てられたという男勝りの娘役であり、ストレッチをぶん殴ったり、銃をぶっ放したりとなかなかの大熱演。ストレッチに組み伏せられ、キスをされたときの表情なんかはやっぱり上手いと思うけど、いわゆるハリウッド女優の典型からはちょっと外れた位置にいた女優さんなんだと改めて思った。

ということで、最後の3人による決闘シーンをちゃんと見せてくれないのは大いに不満であるが、全体としては良くまとまった作品。特に、リチャード・ウィドマークの演技から、早くも単なる悪役のイメージを払拭しようとする姿勢がうかがわれるのが非常に興味深く、きっと、こんな努力の積み重ねによって大スターになったんだろうなあって思いました。