名画を見る眼(正・続)

前に読んだ「カラー版 西洋美術史」を監修していた高階秀爾の本。正・続あわせて計29点の名画の解説を読むことができる。

この本の最初に紹介されているのは1434年に描かれたファン・アイクの「アルノルフィニ夫妻の肖像」という作品なんだけど、この絵を見たとき、何故か“新しい?!”という印象を受けてしまい、いきなりちょっと戸惑った。

実は、次に紹介されているボッティチェルリの作品を、去年、ウフィツィ美術館で見たときにもこれと同じ感覚に襲われたんだけど、これらの作品と3番目に紹介されているダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子」以降の作品を見比べると、どういう訳か製作年が古い前者のほうに“新しさ”を感じてしまうんだよね。

そのことがずーっと引っかかっていたんだけど、今回この本を読んでその理由が良く解った。要するにファン・アイクボッティチェルリの作品は平面的なんだよね。もちろん、これらの作品でも遠近法は取り入れられているんだけど、ダ・ヴィンチ以降のように極端ではないんで、むしろマネ以降の近代絵画により近い印象を受けたのだと思う。

ということで、そんなことも含め、29編の解説のいずれもがとても面白く、かつ、通読することで西洋絵画の歴史も理解できるというまさに定評どおりの名著でした。まあ、歴史のほうについては、当然、これ以外にもいろんな捉え方があるのだとは思うが、当分の間はここで紹介された“高階史観”の立場から名画を楽しませていただくことにしましょう。