ヴェルサイユの宮廷庭師

2014年作品
監督 アラン・リックマン 出演 ケイト・ウィンスレットマティアス・スーナールツ
(あらすじ)
ルイ14世から新たに建設されるヴェルサイユ宮殿の庭園を任されることになったル・ノートル(マティアス・スーナールツ)は、一緒に働いてくれる造園家を広く民間から募集することとし、サビーヌ・ド・バラ(ケイト・ウィンスレット)の元にもその知らせが届く。最初の面接では“秩序”を巡る見解の相違から言い争いになってしまった二人だったが、彼女の独創性に興味を抱いたル・ノートルは…


アラン・リックマンが共同脚本・出演(=ルイ14世役)も兼ねた監督第二作目。

楽しみにしていたNHKの「ダウントン・アビー」が終わってしまい、それによって生じた“心の隙間”を埋めるため(?)、昨日、妻と一緒に「いつか晴れた日に(1995年)」のDVDを見ていたのだが、そこに出演しているケイト・ウィンスレットアラン・リックマンを見ているうちに本作の存在を思い出す。

さて、フランス式庭園の基本である“平面幾何学式庭園”を得意とするル・ノートルは、ヴェルサイユ宮殿の庭園にちょっとした変化を取り入れるためにサビーヌに「舞踏の間」の造園を任せるのだが、そこで彼女に期待したのが自らの幾何学的な秩序からのちょっとした逸脱であり、本作の原題である「A Little Chaos」も直接的にはそれを指している。

もちろん、それ以外の宮廷生活や夫婦生活にもカオスは存在している訳であり、中でもル・ノートルに係る夫婦間の不和の問題が大きく取り上げられているのだが、それが彼とサビーヌの不倫関係を正当化するための方便として使われているみたいなところがちょっとした気掛かり。見終わってから調べてみたところ、案の定、サビーヌ・ド・バラというキャラは架空の存在であった。

いや、そのこと自体に問題は無く、良く出来た“お話し”は俺の大好物なのだが、本作の場合、むしろお話しの完成度がそれほど高くないところが問題であり、作中、何度も思わせぶりに現れるサビーヌの娘の亡霊(?)に関する種明しなんかは完全な期待外れ。「メッセージ(2016年)」にも似たようなシーンがあったが、その衝撃度において雲泥の差がある。

ということで、どこまで歴史に忠実なのかは不明だが、ル・ノートルという造園家がヴェルサイユ宮殿の庭園を手掛けたことは間違いないようであり、「舞踏の間」も実際に存在するらしい。今後、フランスを訪れる機会があれば、是非、見学コースに加えてみたいと思います。