鳩の翼

1997年作品
監督 イアン・ソフトリー 出演 ヘレナ・ボナム=カーター、ライナス・ローチ
(あらすじ)
1910年のロンドン。アヘン中毒の父と貧しい生活を送っていたケイト(ヘレナ・ボナム=カーター)は、上流階級の叔母によって引き取られるが、同時に、恋人で新聞記者のマートン(ライナス・ローチ)との交際を禁じられてしまう。そんなある日、彼女はアメリカからやってきた富豪の娘ミリーと出会い、友人になるが、ケイトの屋敷に押しかけてきたマートンの姿を見かけたミリーは、彼に好意を抱く….


文豪ヘンリー・ジェイムズ1903年に発表した名作の映画化。

ケイトの母親は上流階級の出身であったが、中産階級の男と駆け落ち同然の結婚をし、彼女を生んだ後、貧しい暮らしに耐え切れずに若死にしてしまったらしい。そんな貧乏の惨めさを身に沁みて分かっているケイトは、一度はマートンとの別れを決意するのだが、そう簡単にいかないのが恋愛感情の困ったところ。

ミリーが余命幾許もない体であることを知ったケイトは、皆が幸せになれるある“名案”を思いつき、それを実行に移すため、ミリーと過ごすヴェニスの地にマートンを招待するのだが、彼に対する抑えがたい恋心から、自分で仕組んだ計画を自ら台無しにしてしまいそうになる。

最後は、どうやらケイトの計画に薄々気付いていたらしいミリーの寛大な計らいもあり、ケイトの筋書き通りの結末を迎えそうになるのだが、またもや恋愛感情の悪戯のせいでこのままハッピーエンドにはならず、せっかくの計画も水の泡。ラスト直前に描かれる冷え切ったベッドシーンの砂を噛むような味わいは、また格別であった。

まあ、主役のケイトにとっては、結局、自業自得ということになってしまうのだろうが、もし、人が自分の感情を思い通りにコントロールできるなら、その名案に何の間違いもなかったところであり、あまり彼女を責める気にもなれない。しかし、公開当時31歳のヘレナ・ボナム=カーターにしてみれば、本作が悪女役への転進(?)を図る第一歩だったのかもしれないなあ。

ということで、美しいヴェニスを舞台に三人の美男美女によって繰り広げる恋愛劇は映像的にも魅力十分であり、101分という上映時間がちょっと短すぎると感じられたくらい。そのうち、ヘレナ・ボナム=カーターが出ている別のコスチューム・プレイ作品も見てみたいと思います。