我等の町

1940年作品
監督 サム・ウッド 出演 ウィリアム・ホールデンマーサ・スコット
(あらすじ)
1901年、マサチューセッツ州の小都市グローバーズ・コーナー。アメリカのどこにでもあるようなその町に住む医師のギブス一家と新聞編集長のウェブ一家とはお隣同士。ギブス家の長男であるジョージ(ウィリアム・ホールデン)は勉強や家の手伝いよりも野球が大好きな青年であったが、同じハイスクールの同級生であるウェブ家の長女エミリー(マーサ・スコット)に淡い恋心を抱いていた....


ソーントン・ワイルダーの有名な戯曲の映画化。

ジョージは野球部のキャプテン兼エースであり、一方のエミリーも美人で学校一の記憶力の持ち主であるが、ハイスクールの卒業と同時に二人は結婚し、ジョージの叔父が経営していた農場を引き継いで平凡な農場暮らしを始める。また、ジョージの母親のギブス夫人はフランスに旅行することを長年夢見ていたが、結局、その夢を果たすことなくこの世を去る。

そんな具合に特別な出来事が起きる訳でもない田舎町の単調な日々が淡々と描かれているのだが、ラストで二人目の子どもを妊娠したエミリーが生死の境を彷徨うときに見る死後の夢(?)の内容を見て納得。そういった平凡な一瞬一瞬の大切さというのが本作のメッセージだったんだね。

まあ、このメッセージにケチをつける気は毛頭無いが、映画的に言って、やはり大した事件が起こらないというのは見ていて相当に物足りない。主演のウィリアム・ホールデンにしても、公開当時22歳ということで、このストーリーの物足りなさを演技力で補うにはまだまだ力不足と言わざるを得ないだろう。

また、ギブス家とウェブ家の当主には、俺の大好きなトーマス・ミッチェルとガイ・キビーを配しているのだが、残念ながらこの名優同士が合い見舞えるような展開にはなっておらず、お互いに実力を十分発揮できていない感じ。だいたい、隣同士というのはそんなに単純な関係ではないのだから、口喧嘩の一つくらいさせれば良かったのにねえ。

ということで、本作では生死の境を彷徨っていたエミリーが目を覚ましてハッピーエンドとなるのだが、原作の戯曲の方では彼女は本当に死んでしまうらしい。まあ、映画の方は人情派のサム・ウッドらしい配慮なんだろうが、確かに夢オチというのは見ていてちょっとズルイような気がしました。