パリで一緒に

1963年作品
監督 リチャード・クワイン 出演 ウィリアム・ホールデンオードリー・ヘップバーン
(あらすじ)
パリのホテルで新作映画のシナリオを執筆中の脚本家ベンスン(ウィリアム・ホールデン)は、締切りまであと2日しかないというのに原稿用紙は真っ白のまま。タイピストのガブリエル(オードリー・ヘップバーン)を雇って「エッフェル搭を盗んだ女」という作品の執筆に取り掛かるが、題名だけで内容が全く決まっていないため、ストーリーは迷走を繰り返すばかり….


ジュリアン・デュヴィヴィエの「アンリエットの巴里祭(1952年)」を、オードリー・ヘップバーン主演でリメイクした作品。

執筆中の脚本の内容が劇中劇として描かれ、脚本が書き直される度にその劇中劇のストーリーも変化するという基本的なアイデアは同じであるが、登場する脚本家が一人だけだったり、劇中劇のヒロインの正体が実は警察のスパイ(?)だったりと、内容的にはオリジナルと異なる部分も相当多い。

一番の違いは、脚本家とタイピストという現実パートのカップルを演じている俳優が劇中劇の方の主人公も演じているという点であり、「アンリエットの巴里祭」では劇中劇の狂言回し的な位置づけにすぎなかった現実パートの方によりウェイトが置かれ、現実パートにおける主人公等の恋の行方がメインのストーリーとして描かれている。

まあ、主演にウィリアム・ホールデンオードリー・ヘップバーンという金のかかる大スターを配したことを考えれば、それも止むを得ないことと思うが、そのために現実パートと劇中劇とのメリハリが弱まってしまっているのがとても残念。せめて演出パターンを変えてくれれば良いのに、両方とも同じようなコメディ仕立てになっているために、現実パートと劇中劇とのギャップで可笑しさを誘うっていう仕組みにもなっていない。

リメイクだからといって、新しいアイデアを付け加えること自体が否定されるべきではないのは当然であるが、本作の場合、オリジナルの優れている点に関する理解が不十分だったようであり、登場人物が脚本家の手を離れて勝手にハッピーエンドにしてしまうという「アンリエットの巴里祭」のオチは、このテーマの作品では外せないところだろうと思う。

ということで、まあ、デュヴィヴィエとリチャード・クワインの力量差といってしまえばそれまでであるが、同じフランスという場所で撮影していても、両作品でこんなにも雰囲気が違ってしまうことに改めて驚かされる。「シャレード(1963年)」とほぼ同じ時期の出演になるオードリーが、まだ十分に美しかったことがせめてもの救いです。