ブレードランナー2049

2017年
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演 ライアン・ゴズリングハリソン・フォード
(あらすじ)
2049年アメリカ西海岸。ブレードランナーのKD6-3.7(ライアン・ゴズリング)は、ロサンゼルス郊外の農場に潜んでいた旧型レプリカントの“解任”に成功するが、その際、庭の枯れ木の地中深く何かが埋められていることに気付く。掘り返してみると、それは女性のレプリカントの遺骨であり、本来、生殖能力を有さないにもかかわらず、その骨には帝王切開を受けた痕跡があった…


実に35年ぶりに製作された「ブレードランナー(1982年)」の続編。

フィリップ・K.ディックの原作を先に読んでいたせいで、オシャレ過ぎる前作にはあまり馴染めなかったというのが正直なところであり、高い世評にもかかわらず、ビデオか何かで1回見ただけ。本作を拝見するに当たって見返しておくべきか迷ったが、いくらなんでも35年前の作品の記憶を要求するような脚本をハリウッドが認めるはずは無いだろう、と勝手に思い込んでしまったのが運の尽き。

驚いたことに、鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が描いたのはその35年前の作品の忠実な続編であり、地中から発見された遺骨のご当人(?)であるレイチェルの出自や、途中から出てくるデッカードハリソン・フォード)との因縁といったものは、前作を見ていないと全く理解できない。

まあ、本作の主要テーマは自らもレプリカントである主人公KD6-3.7の絶望的な孤独であり、彼の唯一の理解者であるホログラムのジョイとの切ない交流の様子や、否定しつつも抱き続けていた一縷の望みが断たれた瞬間の喪失感といったものを見て、マゾヒスティックな快感に酔いしれることも十分可能なのだが、やはり前作の記憶を新たにしてから鑑賞に臨んだ方がずーっと面白く見られたに違いない。

ちなみに、一緒に見ていた娘は一度も前作を見ていないのだが、そのこと以上に彼女を苦しめたのは本作の展開の異様な遅さ。ヴィルヌーヴ監督にしてみれば、アカデミーの撮影賞&視覚効果賞に輝いたアーティスティックな映像をファンの方々に十分堪能して欲しかったのだろうが、一般の観客にとって163分の上映時間はちょっと長すぎたように思う。

ということで、決して悪い出来ではないのだが、見る人を選ぶ作品であり、興行成績が振るわなかったというのも致し方ないところ。ヴィルヌーヴ監督の次の予定はフランク・ハーバートの「デューン/砂の惑星」の再映画化らしいのだが、色々といわくのある難作であり、本作の興行成績が悪い影響を及ぼさないことを祈ってます。