黄金のメロディ マッスル・ショールズ

2013年作品
監督 グレッグ・“フレディ”・キャマリア 出演 リック・ホール、ロジャー・ホーキンズ
(あらすじ)
1959年、アラバマ州のマッスル・ショールズという田舎町にリック・ホールという男が「フェイム・スタジオ」を設立。地元の白人のミュージシャンを集めて作ったリズムセクションをバックに製作されたソウルフルなサウンドは間もなく世界中の注目を集めるようになるが、その後、有力なスタジオ・ミュージシャンたちはリックと袂を分かち、別に「マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ」を立ち上げる…


マッスル・ショールズ・サウンドを作り上げたリック・ホール等の活動を綴ったドキュメンタリー映画

1970年代に洋楽を聴いていた今の老人たち(=当然、俺も含まれる。)にとって“マッスル・ショールズ”というのは一種の魔法の言葉であり、お気に入りのアーティストたちがそのスタジオで新しいアルバムを録音してくると、あ〜ら不思議、それまでとは一味違った新しい魅力を身に付けて帰ってくる。

そんなアルバムの裏面に決まって印字されていたのがBarry Beckett(Key.)、David Hood(Ba.)、Roger Hawkins(Dr.)という3人のスタジオ・ミュージシャンの名前であり、俺にとっては“マッスル・ショールズ≒この3人”という印象が強かったのだが、本作の冒頭に登場するのはリック・ホールというヘンテコな口ひげを生やした老人。成程、この頑固オヤジがスワンパーズの育ての親だったのか。

実をいうと、マッスル・ショールズというのがアラバマ州にある町の名前だったということも本作で知ったくらいなのだが、それだけに初めて耳にするような興味深いエピソードが満載。特に、気むずかし屋のウィルソン・ピケットを初めてスタジオに迎えたときの話は最高にスリリングであり、まだ“スーパーマーケットの店員”みたいな若造だったロジャー・ホーキンズたちの緊張感が手に取るように伝わってくる。

また、我等が“スカイドッグ”デュアン・オールマンを比較的大きく取り扱ってくれているところも好印象であり、いつまでたっても“お兄ちゃんっ子”ぶりの変らない弟グレッグへのインタビューなんかも含まれている。今度の山歩きのときには、久しぶりに「Duane Allman Anthology」でも聴いてみようかな。

ということで、デュアン以外にも既に故人になってしまったミュージシャンの名前が沢山出てくるので、時の経過を強く感じさせる内容になっている。ニール・ヤング支持の俺にとっては仇敵だったレーナード・スキナードにしてもあの飛行機事故から40年が経過しようとしているところであり、本作を見たのを機に和解しても良いかなという気になりました。