踊るブロードウェイ

1935年作品
監督 ロイ・デル・ルース 出演 エリノア・パウエル、ロバート・テイラー
(あらすじ)
ブロードウェイの若手演出家ボブ・ゴードン(ロバート・テイラー)は、新作「ブロードウェイ・リズム」の準備で多忙な日々を送っていたが、そんな彼を頼って幼なじみのアイリーン・フォスター(エリノア・パウエル)が田舎から出てくる。しかし、ショービジネス界の厳しさをイヤというほど知っているゴードンは彼女をオーディションにも参加させようとせず、すぐに田舎に帰るように説得する…


傾きかけていたMGMの屋台骨を一気に建て直したという当時の大ヒット・ミュージカル。

いきなり名曲「You Are My Lucky Star」が流れてくるなど、歌と踊りが満載のミュージカル映画なのだが、実をいうとクレジットの最初に登場するのは新聞記者キーランを演じているジャック・ベニーであり、彼の書いたいい加減なゴシップ記事が巻き起こす様々な騒動が本作のストーリーのもう一つの柱になっている。

したがって内容は意外に複雑であり、新作「ブロードウェイ・リズム」の主役の座を巡ってスポンサーである金持未亡人のリリアンや謎のフランス人美女が暗躍する(?)など、コメディー的要素も豊富。また、直接ストーリーに絡むことは無いが、様々ないびきの音を演じ分けられる“いびきの専門家”まで出てくる。

昔のミュージカル映画といえば“ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー”というのが通説のようであるが、以前拝見した「踊るアメリカ艦隊(1936年)」にしてもこの作品にしてもそれ以外の要素がふんだんにちりばめられており、おそらく次第にストーリーが単純化していったのはアステア&ロジャースのコンビが活躍し出す頃からなのではなかろうか。

とはいっても、本作の最大の見所はやはり(実質的な)主役であるエリノア・パウエルのダンス・シーンであり、お得意のタップダンスばかりか、何とバレエまで披露してくれる。しかも、ちゃんとトウで踊っているのだから付け焼き刃とは思えず、ひょっとしたら彼女の必殺技である高速ターンはバレエの経験から編み出されたものなのかもしれないなあ。

ということで、いろんな要素が詰め込まれた作品なのだが、さらにエリノア・パウエルがダンス以外で見せてくれるのが「勝利の朝(1933年)」におけるキャサリン・ヘプバーンのモノマネ。俺は当該作品を全く評価していないのだが、2年後の本作でも取り上げられているということは当時の評判は相当高かったものと推測されます。