マジカル・ガール

2014年作品
監督 カルロス・ベルムト 出演 バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ
(あらすじ)
失業中のルイス(ルイス・ベルメホ)の一人娘アリシア白血病で余命幾許もない体。そんな彼女の夢は“魔法少女ユキコ”のコスチュームを身につけて踊ることであり、ルイスは彼女のために特注品のコスチュームを手に入れようとするが、高額すぎて手が出ない。困った彼は、ひょんなことから一夜を共にした人妻のバルバラバルバラ・レニー)を脅し、彼女から大金を強請り取ろうとするのだが…


架空のものではあるが、日本製アニメがテーマの一つになっているということで話題になった作品。

本作にはもう一人、極めて重要な人物が登場し、それは少女時代のバルバラの教師であったダミアンという老人。彼とバルバラとの間には過去に何らかの“事件”が存在し、それが原因で彼は刑務所で10年間服役することになったのだが、その事件の具体的な内容に関して作中では一切触れられていない。

実をいうと、本作にはそれ以外にも“肝心なところ”が描かれていないエピソードが沢山登場するのだが、妖婦(=魔法少女の成れの果て?)バルバラの一見支離滅裂な行動を見ているうちに、そのスミで塗りつぶされた部分が次第に推測できるようになっているところが大変面白い。おそらく「チャタレイ夫人の恋人」の最初の日本語訳を読んだ人々もこれと同じ気持ちだったんじゃないのかなあ。

また、「世界」、「悪魔」、そして「肉」という3つのパートに分かれたストーリーもかなり意表を突く内容であり、あれよあれよという間に全く別のお話になってしまう。正直、冷静になって考えてみれば腑に落ちないところも少なからずあるのだが、新旧魔法少女に操られた哀れな男たちの所業と考えれば、まあ、理解できないことも無い。

特に、やっとのことで手に入れた特注品のコスチュームをプレゼントされたアリシアが見せる何気ない仕草は、娘を持つ男親にとってみれば必殺の最強魔法であり、う〜ん、ルイスでなくても思わず人生を間違えてしまうかもしれないなあ。

ということで、“推測”の中身に関しては、どうしても見る人の趣味や嗜好が反映してしまうところであり、例えば“トカゲの部屋”で行われた行為の内容について他人に話をするのにはかなりの勇気(?)が必要。結局、途中から一緒に見ていた妻には、“何だか訳が分からない映画だったね”と言って誤魔化してしまいました。