言の葉の庭

2013年作品
監督 新海誠
(あらすじ)
高校一年生のタカオの夢は靴職人になること。雨の日の一限目は授業をサボり、公園の東屋で靴のデザイン等を考えることにしていたが、梅雨時のある日、いつもの東屋に来てみると、そこには缶ビール片手の若い女性が座っていた。そんなことが何度か繰り返されるうちに自然と二人の間に会話が交わされるようになり、タカオはユキノと名乗るその女性に自分の夢を打ち明ける…


新海誠というアニメーション作家が監督した上映時間45分のアニメ作品。

最近、映画館に行く度に必ず目にする予告編の一つに「君の名は。」というアニメ映画があり、ちょっと気になったので娘に知っているか尋ねてみたところ、監督を務めている新海誠という人は若者を中心にかなり高い評価を集めているらしいことが判明。そう言われるとにわかに興味が湧いてきてしまい、その前作に当たるこの作品を見てみることにした。

さて、Wikipediaに「全作品を通して、風景描写の緻密さ・美しさが特筆される」とあるとおり、本作においても降りしきる雨の描写が秀逸であり、正直、この点が一番印象に残っている。現実的には梅雨時の雨は鬱陶しいだけであるが、この作品において雨は主人公の二人が会うことのできるサインみたいなものであり、キラキラ光っていてとても美しい。

それに対し、ストーリーの方はいたって普通であり、男子高校生の年上の女性に対する淡い初恋が描かれているだけ。ある事件をきっかけに心に傷を負ったヒロインが、純真な高校生とのささやかな交流を通じて心が癒やされていくというのは分かるのだが、個人的に、昼間から公園で缶ビールをあおっているような人間は好きになれないので、どうしても老人目線で批判的に見てしまうのが困りもの。

一応、年齢より大人びて見えるという設定はあるにしろ、20代後半の女性が通りすがりの高校一年生の男子に心を許すというのはどう考えても不自然であり、特にその男子が自分の勤めている高校の生徒であるならなおのこと。普通だったら、公園で缶ビールを飲んでいるところを見られただけで、逃げ出すところだろう。

ということで、残念ながら年齢的なギャップもあってあまり面白くは感じられなかったのだが、予告編で見た「君の名は。」はスピード感からして本作とは随分異なっているような印象。少々迷うところであるが、映画館に見に行くかどうかの判断は娘に委ねたいと思います。