黄金のアデーレ 名画の帰還

今日は、妻と一緒に「黄金のアデーレ 名画の帰還」を見に行ってきた。

実は、彼女も楽しみにしている「007 スペクター」の先行ロードショーを見るという選択肢もあったのだが、ロングラン間違い無しの当該作品に対し、本作の方は1、2週間くらいで消えてしまう可能性大。ならば「007 スペクター」の方は来週回しということで映画館へ向かうが、この時点では本作が実話ベースの作品だということは全く知らなかった。

さて、主演のヘレン・ミレンは我が家ではマギー・スミスと並ぶ人気のおばあさん女優であり、クリムトの名画にも興味津々ということで大変面白く拝見させて頂いたところであるが、ずーっと“最後は何らかの妥協が図られて「黄金のアデーレ」はオーストリア国内に残るのだろう”と思いながら見ていたので、現在はニューヨークの美術館に展示されている旨のエンドクレジットを見て吃驚仰天。

それが史実なのだから仕方が無いのだが、そこまで勝敗が明らかになってしまうと“主人公たちの狙いはやはり金だったのではないか”という下衆の勘ぐりが頭を持ち上げてきてしまいそうになり、う〜ん、いまひとつスッキリしない気分。そういえば、最初は金目当てだった弁護士のライアン(=作曲家シェーンベルクの孫!)が、自分の出自を再認識して心を入れ替えるきっかけも良く分からなかったしなあ。

まあ、冷静になってこの問題を振り返ってみると、一番偉かったのは、主人公たちの主張の正当性を客観的に判断して国宝級の名画の返還に同意したオーストリアの人々であり、過去の悪行の数々をさっさと水に流してしまいたがっている何処かの国の国民にはとても真似は出来ないだろう。

ということで、年老いた主人公が名画の奪還に着手する1998年以降の出来事の合間に、若き日の彼女がオーストリアに住んでいた頃の回想シーンが何度か挿入されるのだが、面白いエピソードが詰まっているのは圧倒的に後者の方。ヘレン・ミレンの出番が減ってしまうのは残念だが、後者の方をメインにして作品化した方がより面白かったような気がします。