日本のいちばん長い日

1967年作品
監督 岡本喜八 出演 三船敏郎黒沢年男
(あらすじ)
昭和20年8月、2度にわたる原爆投下とソ連の参戦という危機的状況の下、政府は連合国側から通告されたポツダム宣言の受諾について何度も閣議を繰り返すが、国体護持を憂慮する阿南陸軍大臣三船敏郎)等の強硬論もあって、容易に結論は出ない。結局、14日正午に御前会議を開催し、そこで直接天皇の御聖断を仰ぐことになるが、それは日本のいちばん長い日の始まりだった….


東宝創立35周年記念作品として製作された岡本喜八監督の代表作の一つ。

昭和20年8月14日正午に開催された御前会議から翌15日正午の玉音放送に至るまでの24時間に起こった出来事を取り上げた作品であり、後半では一部の陸軍将校等によって企てられた宮城事件の顛末が詳しく描かれている。

創立35周年記念作品ということで、出演者の顔ぶれは大変豪華であり、総理大臣の鈴木貫太郎を演じた笠智衆をはじめ東郷外務大臣役の宮口精二、米内海軍大臣役の山村聰といったベテラン俳優たちがずらっと顔を揃える閣議等のシーンはなかなかの壮観。伊藤雄之助天本英世等の“怪優”の顔を久しぶりに拝見できたのもとても嬉しかった。

半藤一利(=大宅壮一名義)のノンフィクションが原作なので、まあ、比較的“史実”に忠実なのだとは思うが、ポツダム宣言受諾後における天皇の立場を案じる閣僚たちと国民の幸福を第一に考える天皇という“美しい構図”だけに焦点を絞っているあたりは眉唾モノであり、少々表面的に過ぎるような気がする。

また、宮城事件の首謀者の一人である畑中少佐(黒沢年男)等の言動を通して戦争の“狂気”を表現しようとしているのは理解できるのだが、正直、本作で描かれている狂気は“最後の悪あがき”みたいな些末なものであり、かつて我が国を戦争の道へと導いていった狂気とは種類が別。残念ながら、現在、国会で審議中の安保関連法案を廃案に追い込むようなメッセージなり論理なりを本作中に見い出すことは出来なかった。

ということで、まあ、迫力十分の娯楽作品としては合格点を差し上げられるのだが、おそらく本作の最大の功績は、殺伐とした“昭和の雰囲気”を今にしっかりと伝えてくれているところだろう。実は、現在、本作のリメイク版が公開中なのだが、出演者の顔ぶれを見ても、本作の異様な雰囲気を再現することは不可能だったろうと思われます。