オブリビオン

2013年作品
監督 ジョセフ・コシンスキー 出演 トム・クルーズモーガン・フリーマン
(あらすじ)
2077年。60年前に起きた異星人スカヴの侵略は何とか撃退したものの、そのときの壊滅的な被害によって地球は荒廃し、人類の大半は木星の衛星タイタンへ移住していた。ジャック(トム・クルーズ)とヴィカのコンビは、そんな無人の地球でスカヴの残党を始末する任務に当たっていたが、ある日、宇宙船が地上に墜落するのを目撃。現場に向かった彼は、冬眠カプセルに入った美女を発見する….


トム・クルーズ主演の本格的SF映画

ジャックの主な任務は、ドローンと呼ばれる対スカヴ用の無人偵察機のメンテナンスであり、保安上の理由から、この任務に就いた5年前に過去の記憶を全て消去されている。しかし、不思議なことに、自分がまだ生まれている筈のない、異星人に侵略される以前の地球で出会った黒髪の女性のイメージが頭から離れず、その意味をはかりかねていた。

で、そんなときに、墜落してきた宇宙船から彼が助け出した美女ジュリアは、まあ、当然のことながら(?)その妄想に登場する女性にソックリな訳であり、その事件が契機となって(あらすじ)で紹介した世界観がガラガラと音を立てて崩れ始める。

まあ、味方であるべきドローンの不気味な振舞い等もあり、最初から何か裏がありそうな雰囲気を濃厚に醸し出してはいるのだが、その“虚構”と“現実”とのコントラストがなかなか精妙であり、その二つの世界を象徴するかの如き、金髪のヴィカ(アンドレア・ライズブロー)と黒髪のジュリア(オルガ・キュリレンコ)という二人の美女の配役もそれに見事にハマっている。

勿論、真のヒロインになるのは後者な訳であるが、かなり“以前”からジャックに対して秘めた思いを寄せていたと思われるヴィカ(=おそらく、彼女も漠然とした昔の記憶と不安を有していたのだろう。)の心情を慮ると、男の俺でも切ない気持ちになってくる。虚構の世界でしかジャックのパートナーになれない彼女の存在の儚さは、あのあっけない最期にも良く現されていたと思う。

ということで、正直、あまり期待しないで拝見したのだが、ストーリー、映像ともに合格点以上の水準であり、これはなかなかの拾い物。ちょっと盛りを過ぎた頃のチャールトン・へストンもSF作品等に精力的に出演し、存在感のある演技を見せてくれたものであるが、今後のトム・クルーズにもちょっと期待できそうな予感がします。