ラ・マンチャの男

1972年作品
監督 アーサー・ヒラー 出演 ピーター・オトゥールソフィア・ローレン
(あらすじ)
異端審問所が権勢をふるっていた中世のスペイン。劇作家のセルバンテスピーター・オトゥール)は教会を侮辱した罪で逮捕され、裁判を受けるまでの間、地下の牢獄に閉じ込められてしまう。そこでは暇をもてあました大勢の囚人たちが裁判の真似事に興じており、被告にされたセルバンテスは自らの弁護を行うため、初老の騎士ドン・キホーテを主人公にした自作の即興劇を演じることに….


昨日の「レ・ミゼラブル」に引き続き、今日はDVDでミュージカル鑑賞。

勿論、ドン・キホーテというのは、正気を失った田舎郷士アロンソ・キハーナの妄想が生み出したキャラクターであり、本作では、自らをドン・キホーテだと信じ込んでいるアロンソを、劇作家のセルバンテスが演じるという少々込み入った構成が採用されている。

おそらく、舞台で上演する場合、そうすることによって“巨大な牢獄”という限定された空間をベースに出来るという大きなメリットがあるのだと思うが、それをそのまんま映画化した場合はどうなのかといえば、逆に、本命である劇中劇が度々寸断されてしまうことによるデメリットの方が大きいような気がする。

せめて、異端審問所に対するセルバンテスの戦いに、ドン・キホーテの“聖戦”のイメージをオーバーラップさせることが出来れば良かったのだが、前者の様子がほとんど描かれていないため、そのような効果もあまり上がっていない。残念ながら、本作を見た限りでは、わざわざ劇作家のセルバンテスを介在させる必要性は無かったように思えてしまう。

とはいっても、主演のピーター・オトゥールの演技は流石に見事なものであり、痩せ衰えたドン・キホーテの向こう側には孤独なキリストの姿までが浮かび上がってくるくらい。麗しのドルシネアことアルドンサ役にソフィア・ローレンをもってきたのは完全な反則であるが、まあ、諸般の事情を考慮すれば仕方ないところだろう。

ということで、本作中に2度歌われる名曲“The Impossible Dream”の歌詞はとても感動的であり、スーパーマンウルトラマンも、みんなドン・キホーテの末裔であることが良く分かりました。