ライフ・イズ・ミラクル

2004年作品
監督 エミール・クストリッツァ 出演 スラヴコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック
(あらすじ)
1992年の旧ユーゴスラビアセルビア人技師のルカ(スラヴコ・スティマチ)は、鉄道敷設事業に携わるため、ベオグラードを離れ、オペラ歌手の妻やサッカー好きな息子ミロシュと一緒にボスニアの田舎町で暮らしていた。しかし、鉄道が開通した頃になって内戦が勃発。最初は現実のこととは信じられなかったルカも、ミロシュが突然軍に招集されることになってようやく事の重大さに気付く….


エミール・クストリッツァが、自らも体験したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に翻弄される人々を描いた作品。

例によって細々としたエピソードが目一杯詰め込まれているのだが、その中でもメインになるのは、ルカとムスリム人の看護師サバーハ(ナターシャ・ソラック)による民族の壁を超えた“純愛”の行方。彼女は、入隊後、敵の捕虜になってしまったミロシュとの交換要員として捕らえられ、妻に逃げられたルカがその身柄を一時預かることになるのだが、二人きりで暮らしているうちにいつしかお互い愛し合うようになってしまう。

まあ、異民族同士とはいえ、(少なくとも)俺の目からは外見的に両者を見分けることは不可能であり、また、いくつかの単語を除けば言語も共通らしいということで、実質的に二人の愛の障害になるような要素は見当たらず、若くて美人のサバーハが冴えない中年男ルカのどこに惹かれたのかという少々やっかみめいた疑問は残るものの、おそらくこの二人の純愛には多くの人々の平和、共存への願いが込められているのだろう。

ちなみに、有名な「ライフ・イズ・ビューティフル(1998年)」に酷似した邦題は配給会社のパクリかと思っていたのだが、本作の英語表記による題名も「LIFE IS A MIRACLE」であり、邦題とほぼ一緒。両方の作品には、戦時下における父子の情愛を描いている点以外にも共通する要素が存在するため、普通なら似たような題名を付けることに抵抗があると思うのだが、エミール・クストリッツァという人はあまり細かなことに拘る性格ではなさそうである。

ということで、扱っているテーマ自体はかなり重いのだが、脚本と演出は「黒猫・白猫(1998年)」に通じるコメディ仕立てであり、(後半の一部分を除き)ほとんど悲惨な印象は受けない。まあ、あの後に予想される女同士の壮烈な闘いの行方はちょっと気になるところであるが、ラストもハッピーエンドと考えて良いのでしょう。