ショート・カッツ

1994年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 アンディ・マクダウェルブルース・デイヴィソン
(あらすじ)
TVキャスターのハワード・フィニガン(ブルース・デイヴィソン)の妻アン(アンディ・マクダウェル)は、明日9歳の誕生日を迎える一人息子ケイシーのためにバースデイ・ケーキを注文するが、そのケイシーは、登校中、ファミレスで働くドリーンの運転する車にはねられて昏睡状態に陥ってしまう。一方、フィニガン家の隣に住んでいるチェリストのゾエは、ジャズシンガーである母親のテスと上手くいっておらず….


ロバート・アルトマンが22人のハリウッドスターを起用して撮ったユニークな群像劇。

このフィニガン夫婦やゾエ母娘の以外にも7組のカップルやその関係者が登場し、浮気をしたり、喧嘩をしたり、そして仲直りをしたりといった、まあ、ハッキリ言ってどうでも良いようなエピソードを3時間余にわたり繰り広げるのだが、どういう訳か、これが最後まで全く退屈することなしに見れてしまう。

一応、交通事故の他にも、死体を見つけたり、自殺者が出たり、最後には殺人らしき事件まで発生するのだが、あくまでもストーリーの中心になるのは些細なことに一喜一憂する夫婦間や親子間の心の葛藤であり、エンドロールに流れるテス役のアニー・ロスの歌声を聴いていたら、“禍福は糾える縄の如し”という言葉がポッカリ頭の中に浮かんできた。

登場するカップルは、その片割れ同士が親子だったり、姉妹だったり、友人だったりするということで、複数のエピソードが交差しながら同時進行的に進んでいく(=これが題名の由来らしい。)ため、見始めの頃は“難しそう”とちょっと警戒してしまうのだが、終わってみればそんな心配は全くの杞憂。

巧みな演出と良く整理された脚本、それに加えてティム・ロビンスジュリアン・ムーアジャック・レモンといった一流どころを揃えた出演者たちの存在感のおかげで、複雑なストーリーもほとんど混乱することなく理解出来るようになっており、このあたりのロバート・アルトマンの手堅い仕事ぶりにも、ちょっと感動してしまった。

ということで、本作のいつ終わるとも知れないストーリーに強烈なピリオドを打つべく、ラスト近くに、突然、大地震が登場人物たちを襲うのだが、ポール・トーマス・ アンダーソンの「マグノリア(1999年)」のラストは、このシーンに影響を受けたものなのでしょうか。