夜の人々

1949年作品
監督 ニコラス・レイ 出演 ファーリー・グレンジャー、キャシー・オドネル
(あらすじ)
殺人罪で服役していたボウイ(ファーリー・グレンジャー)は、Tダブとチカマウという2人の仲間に誘われて脱獄を決行。チカマウの兄の家に一時的に身を寄せた彼は、その家の一人娘キーチ(キャシー・オドネル)と出会い、弁護士を雇って人生をやり直したいという自分の夢を語るが、それも束の間、銀行強盗を働くために仲間2人と一緒に再び車に乗ってその家を去って行った….


ニコラス・レイ37歳のときの監督デビュー作。

ボウイは16歳のときに犯した殺人の罪で無期懲役の判決を受け、その後、刑務所の中で7年間を過ごしたという設定。親代わり(?)のTダブから“それと同じケースで再審の結果、無罪放免になった例がある”とそそのかされ、弁護士を雇う費用を稼ぐために脱獄に加わったらしい。

しかし、銀行強盗には成功したものの、結局、正体が警察にバレてしまい、弁護士を雇って無罪放免になるという彼の夢は完全に崩壊。やはり不幸な環境の故、将来への希望を持てないでいたキーチと2人だけの逃避行に旅立つことになる訳であるが、この少年少女による道行きのせつなさは相当胸にくるものがある。

“夜”の世界で育てられた彼等は、実は、キスの仕方も良く分からないという世間知らずなカップルであり、2人だけの結婚式も偽名を使って挙げるしかない訳であるが、そんな彼等のことを面白おかしく書き立て、ギャング・スターに仕立てあげようとするマスコミの嫌らしさ、無責任さもしっかりと描かれている。

本作が監督デビューとなるニコラス・レイは、動と静のメリハリのきいた新人らしからぬ優れた演出を披露してくれており、特に、空撮を交えながらスピーディーに表現した冒頭の車による逃走シーンは、当時のハリウッド映画界に相当新鮮な印象を与えたのではないだろうか。

ということで、このボウイとキーチのせつない道行きを25年後にリメイクしたのが、ロバート・アルトマンの「ボウイ&キーチ(1974年)」であるとのこと。ギャング物はあまり得意ではないため、これまで鑑賞を見送ってきた作品であるが、こういうストーリーなら話は別。DVD化されているようなので、何とか見てみようと思います。