アリスの恋

1974年作品
監督 マーティン・スコセッシ 出演 エレン・バースティンクリス・クリストファーソン
(あらすじ)
突然の交通事故で夫を亡くしてしまった平凡な主婦のアリス(エレン・バースティン)。幼い頃からの夢であった歌手になることで生計を立てようと思い立ち、一人息子のトミーを連れて生まれ故郷のモンタレーを目指し旅立つが、現実は決して甘くなく、途中に立ち寄った町で何とか手に入れた酒場での弾き語りの仕事も、言い寄ってきた若い男の甘い言葉に乗せられたことが原因でフイにしてしまう….


タクシードライバー(1976年)」の2年前に公開されたマーティン・スコセッシの初期監督作品。

亡夫との結婚生活も決して上手くいっていた訳ではないということで、我が身の男運の悪さを嘆くアリスであったが、そんな彼女の前に現れた第三の男が、今までの男たちとはちょっと違ったタイプである真面目な農場主のデヴィッド(クリス・クリストファーソン)。

“女性の自立”がテーマの作品とのことであるが、実際は歌がそれ程上手い訳でもなく、他にこれといった特技もない子連れの中年女が一人で生きていくのはなかなか大変なことであり、結局は“女性に理解のある男と結ばれることが女の幸せ”みたいな形で終わってしまっているのは、当時の限界だったのかなあ。

また、DVDに収められていた主演のお二人に対するインタビューによると、本作のハッピーエンドの決め手となるデヴィッドの“農場を売り払って君について行く”みたいな趣旨のセリフはクリス・クリストファーソンのアイデアによるものらしいのだが、多くの職を転々としたクリス自身ならまだしも、本物の農場主ならちょっと口に出せないセリフのような気がした。

まあ、そんな細かな点ではいくつか気になるところがあるものの、コメディタッチで描かれた中年女性のロードムービーはなかなか良く出来ており、最後まで楽しく拝見させて頂いた。歌手でもあるクリス・クリストファーソンの主演にもかかわらず、BGMがモット・ザ・フープルTレックスと、早くもスコセッシの趣味が現れているのも興味深かった。

ということで、「タクシードライバー」の方はロードショー公開時に見に行った覚えがあるのだが、その2年前に当時32歳に過ぎなかったスコセッシがこのような味わいの作品を撮っていたというのはちょっとした驚き。男の子みたいなジョディ・フォスターの初々しいお姿を拝むこともできます。