クレイジー・ハート

2009年作品
監督 スコット・クーパー 出演 ジェフ・ブリッジスマギー・ギレンホール
(あらすじ)
往年の人気カントリー・シンガーであるバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)も今ではすっかり落ちぶれてしまい、場末のバーやボーリング場などのドサ回りで何とか食いつないでいるような毎日。酒とタバコで体はボロボロであり、ここ数年は新曲も書けないような状態であるが、そんな彼のもとへ地方紙の駆け出し女性記者ジーン・クラドック(マギー・ギレンホール)からの取材の申込みが.…


ジェフ・ブリッジスが2009年アカデミー賞で主演男優賞に輝いた作品。

主人公バッド・ブレイクの年齢は57歳という設定であり、アル中の上にチェーンスモーカーということで体調は絶不調の筈なのだが、何故か女性関係の方は依然としてお盛んなようであり、子持ちのバツイチとはいえ、自分より30歳近く年下と思われる女性記者のジーンと良い仲になってしまう。

流石にそのままハッピーエンドという訳にはいかないのだが、似たようなテーマを持つ「レスラー(2008年)」の悲惨さなんかに比べると随分と救いのある結末になっており、まあ、そんなラストシーンにホッとすると同時に少々の物足りなさを感じてしまうのは、俺の人間性に何か問題があるからなのかなあ。

カントリー歌手が主人公ということで、作中でも沢山のカントリーの楽曲が流れるのだが、これがなかなかの佳曲ぞろいで聴き応え十分。しかも、それらは吹替えではなく、ジェフ・ブリッジスや、バッドのかつての弟子トミー・スウィート役で出演しているコリン・ファレル自身が歌やギターを担当しているということで、臨場感も満点。

残念なのは、音楽映画という訳ではないため、各曲の演奏時間があまり長くなく、せっかくの佳曲をフルコーラスで聴くことが出来ないこと。幸い、本作のサントラ盤も発売されているようなので、そちらでしっかり楽しむことにしようと思うのだが、あの、飲み過ぎて気分が悪くなったバッドが演奏を途中でスッポカしてしまった曲は、どんな形でCDに収録されているのだろうか。

ということで、主演のジェフ・ブリッジスであるが、歳をとるに連れて“怪優”のイメージが強くなっていたものの、本作での老ミュージシャンぶりは男の俺が見ても本当にカッコいい。やはり、老後のことを考えたら、プロレスラーよりミュージシャンになる方が圧倒的に有利のようです。