プレシャス

2009年作品
監督 リー・ダニエルズ 出演 ガボレイ・シディベ、モニーク
(あらすじ)
ニューヨークのハーレムに住んでいるプレシャス(ガボレイ・シディベ)は、極度の肥満のうえに読み書きもロクに出来ないという16歳の黒人の女の子。母親のメアリー(モニーク)と二人で暮らしているが、父親(=母親のボーイフレンド)によるたび重なるレイプによって2度目の妊娠をしてしまい、それが原因で学校は退学。校長の勧めもあってフリースクールに通うことになるが….


2009年アカデミー賞で主要6部門にノミネートされた話題作。

これら以外にも、プレシャスの第一子が重い障害を抱えていたり、生活保護費の不正受給をしていたりと彼女の周りには問題が山積している訳であるが、それらの直接の原因になっているのは母親メアリーによるプレシャスへの虐待。途中に二人が取っ組み合いの喧嘩を始めるシーンが出てくるのだが、ここでのメアリーの暴力からはほとんど殺意に近いものさえ感じ取れてしまう。

しかし、その一方でプレシャスが新たに通うことになるフリースクールの教師や市役所のケースワーカー等、彼女の力になろうとする人物も何人か登場するのだが、そのほとんどは女性。大体、本作における男の存在感は極めて希薄であり、ちゃんとした台詞があるのはプレシャスが第二子を出産した病院に勤務する男性看護師ぐらい。

終盤になって母親メアリーの告白からプレシャスに対する虐待の理由が明らかになり、ここで男の存在感が一気に急上昇する訳であるが、それも完全に否定的な意味においてであり、誠に残念なことながら、プレシャスたちにとって我々男というものは災いの種でしかないようである。

まあ、そんなストーリーの悲惨さを少しでも緩和するため、ミュージシャンのマライア・キャリーレニー・クラヴィッツを俳優として起用する等、制作側もいろいろ工夫しているようであるが、本作の最大の勝因はやはりプレシャス役に新人のガボレイ・シディベを大抜擢したことであり、彼女の力強い演技は見ている観客にとってほとんど唯一の救いであった。

ということで、最近のウィル・スミスやビヨンセといった黒人スターを見ていると、一昔前のシドニー・ポワチエダイアナ・ロスなんかに比べてさえ、随分と白人的な顔立ちになってしまっていることが気になっていたのだが、本作を拝見して昔ながらの容姿の方々も頑張っていることが良く分かり、少し安心しました。