2009年作品
監督 クリント・イーストウッド 出演 モーガン・フリーマン、マット・デイモン
(あらすじ)
1994年4月、ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は、30年近い獄中生活の後、南アフリカ共和国の大統領に選出される。一方、翌年にラグビーワールドカップの自国開催を控え、主将のフランソワ・ピナール(マット・デイモン)率いる代表チーム“スプリングボクス”はイングランドとテストマッチを行うが、その試合を観戦していたマンデラは、黒人の観客たちが敵方のイングランドに声援を送る光景を目にする...
クリント・イーストウッドの最新作は、南アフリカで行われた1995年ラグビーワールドカップを題材にした実話もの。
要するに、黒人たちにとって、スプリングボクスはアパルトヘイト政策の象徴であり、応援するなんていうことはもってのほか。しかし、その光景を目撃したマンデラは、ワールドカップを人種融和の絶好の機会と考え、フランソワ・ピナールを官邸に招待して協力を求める。
まあ、長年、国際試合から遠ざかっていたスプリングボクスが、一躍、ワールドカップで大躍進を遂げるというストーリーは、普通ならそれだけで十分感動的なのだろうが、実話ということで見る前から結末が判ってしまっているため、その感動も5割引。しかし、イーストウッド監督は、印象的なエピソードを随所に挿入することにより、観客を最後まで物語に惹きつけることに成功している。
特に、黒人と白人の混成チームによるシークレットサービスの描写にそれなりの時間を割くことにより、いつ襲ってくるか分からない要人テロの恐怖をサスペンスの隠し味に使った演出はなかなか見事であり、決勝戦におけるあのジェット旅客機のシーンでは、俺もまんまと騙されてしまった。(ちなみに、あれって事実なの?)
ネルソン・マンデラに扮したモーガン・フリーマンは、もう、本人以上に本人らしいのだが、それ以上に素晴らしいのがピナール役のマット・デイモン。ウェイトを増やし、いつもより一回り大きくなった彼の勇姿は、本物のラグビー選手たちの間に入っても、全く違和感が無かった。
ということで、“インビクタス”というのは、長い獄中生活においてマンデラの心の支えになったといわれるウイリアム・アーネスト・ヘンリー作の詩の題名であり、本作のラストでマンデラが呟く“I am the master of my fate”という一節も、この詩から取られたそうです。