ドライビング Miss デイジー

1989年作品
監督 ブルース・ベレスフォード 出演 モーガン・フリーマンジェシカ・タンディ
(あらすじ)
1948年のジョージア州アトランタ。元教師の老婦人デイジージェシカ・タンディ)は、通いの黒人家政婦を置くだけの一人暮らし。ある日、買い物に出かけるため車を車庫から出そうとするが、操作を誤って隣家の垣根に突っ込んでしまう。近所に住んでいる息子のブーリーは、彼女に無断で初老の黒人男性ホーク(モーガン・フリーマン)を運転手として雇うことにしたが….


アカデミー賞作品賞に輝いた超有名なヒューマン・コメディ。

白人(といってもユダヤ人)の老婦人と初老の黒人運転手との25年に及ぶ“交流”の様子を描いた作品であり、まあ、あまり若者向けとは言い難いテーマの故、公開当時からあまり見る気が起きなかったのだが、今や俺も立派な中高年ということで、今回、一念発起して拝見させていただいた次第。

ユダヤ人における黒人への差別意識の強さについては、アイザック・アシモフの自伝等でもお馴染みであったが、デイジーは元教師ということで黒人差別がいけないことについて頭では良く理解している。したがって、最初、彼女がホークを歓迎しなかったのは、お抱え運転手を持つことが、“金持ちに見られたくない”という彼女のポリシーに反するためだったという可能性も一概には否定できない。

しかし、尊敬するキング牧師の講演を聴きに行くとき、“ホークも聴きたがるかもしれない”とは思いもよらないあたりにも、彼女の偏見の根深さが現れており、結局、自分に痴呆の症状が現れたことを知る恐慌状態の中で、初めて彼のことを“友人”として口に出して認めることが出来る。

一方のホークの方も決して忠実な下僕という訳ではないのだが、それまでの長い差別の経験から白人の扱い方は十分に心得ているっていう感じ。まあ、そのこと自体、悲しいことなのかもしれないが、“大人”のホークが“子供”のデイジーを優しく見守っているという本作の図式は、昔のハリウッド映画では到底考えられなかったことだろう。

ということで、主演のお二人の演技は勿論のこと、ブーリーに扮したダン・エイクロイドの程よいダメ息子ぶりも素晴らしく、まずは期待どおりの佳品だと思う。それだけにラストの甘さが少々残念ではあるが、まあ、痴呆は今回のテーマはではない故、ここは大目に見ておきましょう。