ミルク

2008年作品
監督 ガス・ヴァン・サント 出演 ショーン・ペンジェームズ・フランコ
(あらすじ)
ニューヨークの金融業界で働くハーヴィー・ミルク(ショーン・ペン)は、40歳の誕生日に同じ同性愛者の青年スコット・スミスジェームズ・フランコ)と出会い、同棲を始める。その後、二人してサンフランシスコに移住し、同性愛者の多い“カストロ地区”でカメラ店を開くが、人懐っこくて交渉上手な彼はいつしか周囲の同性愛者たちから頼られる存在となり、ついには市の執行委員選挙に立候補する….


自ら同性愛者であることを明らかにした政治家ハーヴィー・ミルクの伝記映画。

ハーヴィーは1930年生まれなので、彼がスコットと出会ったのは1970年ということになる。その後、1972年にサンフランシスコに引っ越し、翌年、初めて選挙に立候補するも落選。1977年の3度目の選挙でようやく当選を果たすが、在職期間わずか11ヶ月で暗殺されてしまう。

といっても、単なるサラリーマンに過ぎなかった彼が、一人、二人と仲間を増やしていき、終いには大勢の同志と協力して、保守派の上院議員等が制定を目指す“プロポジション6”(=同性愛者を教職から排除するという法案)を否決に追いやるというストーリーには、一貫して前向きな印象が強い。

同性愛がテーマの作品故、所々ちょっと戸惑ってしまうシーンも出てくるものの、登場する同性愛者たちは(一人を除き)素直で誠実な方々ばかりであり、まあ、ちょっと出来過ぎのような気もするが、とても気持ちの良い作品に仕上がっている。本作で2度目のオスカーを手にしたショーン・ペンの演技も流石であり、惚れっぽくて、しかも面食いというハーヴィーの“一面”もうまく出ていたと思う。

ストーリー的に残念なのは、ハーヴィーを暗殺するダン・ホワイトの動機(=ハーヴィーに対する同じ政治家としての嫉妬心)がいま一つピンとこないところ。フィクションであれば“ガチガチのキリスト教原理主義者の凶行”ということにしておいた方が簡単だったと思うが、まあ、史実なんじゃあしょうがない。

ということで、今から30年以上前の話であるが、わが国の“現状”はこの国から何十年くらい遅れていることになるんだろう。ここ数年、TVでは道化を演じることによって市民権を認められた方々が数多く見られるようになってきたが、本作に出てきたような普通の同性愛者の皆さんは一体どうしているのでしょう。