シャーロック・ホームズの冒険

1970年作品
監督 ビリー・ワイルダー 出演 ロバート・スティーヴンス、コリン・ブレイクリー
(あらすじ)
名探偵として評判の高いシャーロック・ホームズ(ロバート・スティーヴンス)も、近頃は平凡な事件の依頼ばかりで少々暇を持て余し気味。同居している友人のワトソン(コリン・ブレークリー)から口うるさく諌められている例の“悪癖”もなかなか止められずにいたが、そんなある日、彼の元へロシアの高名なバレリーナから彼女の引退興行への招待状が送られてくる….


名匠ビリー・ワイルダーが手がけたシャーロック・ホームズ物。

ホームズの私生活に強く関わっているという理由から、長年誰にも知らされずにいた彼の未公開事件簿が、ワトソンの死から50年を経て明らかにされる、という設定であり、ストーリーは、ワイルダーと彼の盟友であるI.A.L. ダイアモンドとが共同で書き上げたオリジナル作品。

DVDの特典映像に入っていた本作の編集者のインタビューによると、元々は4つのエピソードが撮影されたらしいのだが、上映時間の都合からそのうち2つはカットされてしまい、ホームズの秘められた女性関係(?)が明らかにされる残りの2つのエピソードだけが公開されたとのことである。

一番目の老バレリーナの話は、まあ、落語のマクラのようなもので、本筋は二番目の美しい人妻から失踪した夫の捜索を依頼される話の方なのだが、これがなかなか良く練られたストーリーであり、良質の推理物として十分に楽しむことが出来る。謎解きのシーンが少々あっけないのが弱点なのだが、ホームズの実兄であるマイクロフトやネス湖の怪獣までが登場し、サービスは満点。

本作を見た直接のきっかけは、先日見た「シャーロック・ホームズ(2009年)」に少々失望を覚えたからなのだが、そこは流石ワイルダーということで、作品の出来からいえばこちらのほうが数段上。英国映画の故、マイクロフトに扮したクルストファー・リー以外は馴染みの薄い俳優さんばかりなのだが、コメディーリリーフを引き受けたワトソン役のコリン・ブレイクリーの熱演には大いに笑わせて頂いた。

ということで、この出来であれば、割愛された2つのエピソードを利用して続編を作ればよかったのにと思うのだが、どうも本作が公開された当事の評判はあまり芳しいものではなかったらしい。こういったのんびりした雰囲気の作品が受け入れられない風潮というのは、何とも残念なことであります。