ミッドナイト・エクスプレス

1978年作品
監督 アラン・パーカー 出演 ブラッド・デイヴィス、ジョン・ハート
(あらすじ)
1970年のトルコ。アメリカ人旅行者のビリー・ヘイズ(ブラッド・デイヴィス)は、観光中に手に入れた2kgのハシシを服の下に隠して空港から出国しようとするが、爆弾テロの警備に当たっていた警察に逮捕され、刑務所に送られてしまう。当時のトルコでは、海外へのヘロイン密輸が大きな国際問題になっており、麻薬犯罪の撲滅に毅然とした姿勢を示したい検察側は、裁判でビリーに終身刑を求刑する….


ダウンタウン物語(1976年)」の翌々年に公開されたアラン・パーカー出世作

アメリカ人のビリーにしてみれば、ハシシの不法所持くらい大した事ではないと考えていたんだろうが、言葉や価値観の異なる異国の地での裁判は、彼にとって悪夢のような非現実感の中で進んでいき、結局、彼には懲役4年2月の実刑判決が下される。

しかし、彼自身も悪いことをしたという自覚はあるので、この“現実”に関しては必死になって受け入れようとするのだが、出所まで残すところあと53日となったときに訪れる第二の悲劇は正に致命的。絶望した彼は遂に脱獄を決意することになるが、原題でもあるこの“ミッドナイト・エクスプレス”という言葉は、脱獄を意味する囚人たちの隠語らしい。

まあ、“ある犯罪に対してどの程度の刑を科すべきか”という問題はなかなか難しく、異なった歴史を有する国の間でバラつきがあるのは(ある程度?)仕方が無いのだろう。本作が、ビリーの行為を正当化するため、“刑が重過ぎる”という理由以外に、“一度確定した刑が覆される”という別の理由を用意したのもおそらくそのせいであり、仮に最初の裁判で求刑どおり終身刑の判決が下されていたら、全く別の話になっていたのかもしれない。

実をいうと、本作は前に一度見たことがあり、先日の麻薬を密輸して捕まった日本人が中国で死刑になったというニュースを知って(あやふやになっていた本作の記憶を新たにするためにも)見直してみた訳であるが、中国のケースではこの二つ目の理由が存在しないため、単純な比較は出来なかった。

ということで、メッセージ的には少々微妙なところがあるものの、アラン・パーカーの演出の的確さは見事であり、既に完成の域に達していると言って良い。これが監督二作目というのだから、才能のある人はやっぱりちょっと違いますねえ。