デイン家の呪い

ダシール・ハメットの長編小説。

56年ぶりの新訳ということで、たまたま本屋で見かけたものを購入。彼の作品を集中的に読んでいた時期からかなりの年数が経っているため、恥ずかしながら、5作品あるという彼の長編小説のうちどれを読んだのかという記憶は最早曖昧になってしまっていたが、幸いなことに本書を読んだのは今回が初めてだった(と思う)。

いわゆる“コンチネンタル・オプもの”なのだが、あとがきでも指摘されているように、本書の主人公は比較的まともな性格の持ち主であり、ヒロインであるゲイブリエルに対するいつもの屈折した愛情表現(?)も、“サディスティック”というより、“意地悪”といったほうがピッタリくる。

内容は、そのゲイブリエルの周囲で発生する少々オカルトじみた連続殺人事件であり、それぞれの殺人事件には“一応の決着”が付けられるものの、奥歯に物の挟まったようないま一つスッキリしない謎を残したまま次々と人が殺されていく。

それというのも、コンチネンタル社の探偵にすぎない“私”にとって重要なのは、顧客から依頼された“盗まれた宝石の捜索”や“少女の保護”であって、必ずしも殺人犯の逮捕ではないためであり、まあ、このへんの“私”の割切り方はまさしくハードボイルド。ラストの謎解きは少々冗漫な印象であったが、久しぶりにハメット作品を楽しませて頂いた。

ということで、このブログのタイトルに彼の名前を付けたのは、単にスペルが覚え易かったからに過ぎず、そのうちもっと気の利いたタイトルに変更しようと思いながら既に4年弱もの月日が経ってしまったという訳です。