レスラー

2008年作品
監督 ダーレン・アロノフスキー 出演 ミッキー・ロークマリサ・トメイ
(あらすじ)
ジ・アヤトラーとの伝説的な試合から早20年、盛りを過ぎた花形レスラーのランディ“ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)は、スーパーでアルバイトをしながら、今でも場末の会場でメインイベンターとして試合を続けていた。孤独な彼の心の慰めは、いきつけのショーパブでストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)と会うことくらいであるが、そんなある日、ランディは試合後のロッカールームで突然倒れてしまう….


第65回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品。

原因は薬物の過剰使用に伴う心臓発作ということで、心臓のバイパス手術で一命を取り留めたランディはプロレスラーを引退。本名のロビン・ラムジンスキーに戻り、スーパーの店員として働きながら、長年仲違をしたままの一人娘ステファニーとの関係を修復したり、キャシディとの新しい生活を夢見たりするのだが、結局、すべて失敗。唯一残されたプロレスのリングに再び戻っていくが、っていうお話し。

まあ、盛りを過ぎたプロスポーツ選手の末路というテーマは別に珍しくも無く、これまでも多くの作品が製作されてきているところであるが、本作はその(ある種の)決定版と言っても良いくらいに良く出来ている。20年ぶりに行われることとなったジ・アヤトラーとの再試合で、ランディが「あそこが俺の居場所」と言い残してリングへ向かうシーンでは、思わず目頭が熱くなってしまった。

その最大の功労者は、何といっても主演のミッキー・ロークだろう。普通、俳優がスポーツ選手を演じるにはどうしても無理があるものだが、プロボクサーの経験もあるという本作のミッキー・ロークは、演技&体格ともに正にロートル・レスラーそのものといって良い程に自然であり、正直、見ているうちにローク(=現実)とランディ(=虚構)の区別が出来なくなってくるくらい。

ということで、ラストでランディが運命の必殺技“ラム・ジャム”を放った直後、暗転した画面から聞こえてくるブルース・スプリングスティーンの歌声&歌詞は、もう反則技スレスレみたいな破壊力を有しているのだが、元プロレス・ファンの立場から言わせてもらうなら、我々が見たいのはレスラーが完全にノックアウトされるシーンではなく、そこから不死鳥のように立ち上がってくるシーンなのであります。