ブラックブック

2006年作品
監督 ポール・ヴァーホーヴェン 出演 カリス・ファン・ハウテン、トム・ホフマン
(あらすじ)
1944年、ドイツ占領下のオランダ。ユダヤ人のラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、ナチスから逃れるために船で南部へ向かう途中、ドイツ軍の待ち伏せに遭い、彼女を除く家族全員が殺されてしまう。その後、ヘルベンやハンス(トム・ホフマン)といった人々が組織するレジスタンスに救われたラヘルは、彼等の依頼に応じ、スパイとしてナチス将校のムンツェに近づこうとするのだが….


ヴァーホーヴェン監督が母国オランダに戻って撮った戦争映画。

ラヘルは、ユダヤ人であることを隠すため、髪を金髪に染め、エリスという偽名を使ってムンツェの愛人になることに成功するのだが、彼は無用な血が流されることを防ぐためにレジスタンスの首謀者と取引をするような人物であり、お互いに戦争で家族を失った者同士ということもあって、いつの間にか真に愛し合うようになる。

実は、「ロボコップ(1987年)」や「スターシップ・トゥルーパーズ(1997年)」のノリを期待して本作を見てみた訳であり、本作での格調ある落ち着いた演出ぶりは全くの想定外。所々戦闘シーンはあるものの「スターシップ・トゥルーパーズ」に比べれば全然大人しいもので、144分という上映時間の3分の2程まではラヘルとムンツェとの許されざる愛の行方に興味津々だった。

ところが、ヴァーホーヴェンがそんな甘っちょろいだけの映画を撮る訳はないということで、実はこの女スパイのストーリーには裏があることが分かり、ここからはいつものヴァーホーヴェン節が炸裂! 囚われの身となったラヘルの頭上から大量の糞尿がぶちまけられるシーンを見て、ああ、やっぱりねえ、と思ってしまった。

まあ、これがヴァーホーヴェンのスタイルなんだから仕方ないとは思うのだが、3分の2までのスリリングなラブロマンスが本当にとても面白かったので、正直、そのままの調子で最後まで行って欲しかったという気持ちがどうしても捨て切れない。ラストでチラっと登場するラヘルの夫がムンツェその人だったら、どんなにか嬉しかったことでしょう。

ということで、ラヘルを演じたカリス・ファン・ハウテンという女優さんは、今のハリウッドにはちょっと見当たらないようなタイプの人で、それこそ体当たりの演技が素晴らしかった。作中でも名前が出てくるグレタ・ガルボをちょっと意識していたのかもしれないが、今度は彼女が楽しそうに笑っている作品も見てみたいところです。