私は殺される

1948年作品
監督 アナトール・リトヴァク 出演 バーバラ・スタンウィックバート・ランカスター
(あらすじ)
大手製薬会社社長の一人娘であるレオナ(バーバラ・スタンウィック)は、夫で同社のニューヨーク支店長を務めるヘンリー(バート・ランカスター)と二人暮らし。最近、心臓の持病が悪化し、ほとんどベッドから離れないような生活を送っていたが、そんなある日、いつもの帰宅時刻を過ぎても会社から戻らない夫の職場に電話をかけた彼女は、混線したらしい電話の向こうから殺人計画の話しを聞いてしまう….


バーバラ・スタンウィックバート・ランカスター主演のスリラー映画。

その後の回想シーンなどで、二人の結婚がスラム街育ちのヘンリーに横恋慕したレオナが父親の反対を押し切って強行したものであることや、ヘンリーが見せかけだけの現在の処遇に満足しておらず、何らかの事件に関わっているらしいこと等が次第に明らかになっていく。

そして、作品の終了間際、ようやくヘンリーと直接電話で話すことが出来たレオナは、彼の話しで冒頭の殺人計画のターゲットが彼女自身であることに気付く訳であるが、時すでに遅し、殺人者の魔の手は彼女のすぐ背後に迫っていた! というストーリーは(後になって考えてみれば)なかなか良く出来ている。

しかし、実際には、「私は殺される」という邦題のせいで、命を狙われているのがレオナ自身であることは間違い電話の時点で容易に予測出来てしまうため、このラストの衝撃はほとんど伝わってこない。原題は“Sorry,Wrong Number”という皮肉なもので、当然、ネタバレにはなっていないのだが、それにこんなバカな邦題を付けた配給会社の良識を疑わざるを得ない。

それともう一つ残念なのは、ヒロインのレオナを“悪女”にしてしまっているところ。まあ、主演のバーバラ・スタンウィックにとって悪女役は正に十八番なんだけど、本作のレオナは金持ちの我儘娘というだけのなんの魅力も感じられないキャラであり、このストーリーからして、彼女を悪女にすることのメリットはあまり無いように思われる。

ということで、相手役のバート・ランカスターはまだデビューして間もない頃であり、出番は少ないものの、ギャングに脅かされて妻の殺害計画に手を貸してしまうというちょっと情けない役柄が良く似合っていました。