2008年作品
監督 黒沢清 出演 香川照之、小泉今日子
(あらすじ)
大手企業の総務課長である佐々木竜平(香川照之)は、総務部門を中国に移すという会社の方針により、あっさりとリストラされてしまうが、家長としての権威を失うことを恐れる彼は、その事実を妻の恵(小泉今日子)にも伝えることが出来ない。また、二人の息子たちとのコミュニケーションも上手くいっておらず、長男の貴は突然アメリカ軍へ入隊したいと言い出す….
2008年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞したことにより、ちょっと話題になった作品。
“トウキョウ”が作品の舞台になっている訳であるが、日本人の大学生が簡単にアメリカ軍に入隊することが出来たりする等、現実の東京とは少々異なった世界での出来事を描いているらしい。大勢の求職者を階段に並ばせたまま待たせているハローワークの描写も異様であるし、無賃乗車で逮捕した中学生を保護者の確認もしないまま一人放り出してしまう警察の行為も、とても現実的とは思えない。
このへんは監督が意図的にやっていることなので、それをリアリティに欠けると批判してもしょうがないのだが、問題なのはそういった設定なり描写なりにどんな効果を期待していたのかが良く理解できないところ。まあ、今さら家庭の崩壊を正面から描いてみても新鮮味がないというのは解るのであるが・・・
また、ラストの方では、一旦バラバラになった佐々木家の面々が再び一緒になる様子が描かれているのだが、その再生の契機になったのが一体何なのかという点についても明確には述べられていない。あの光の使い方なんかから考えると、あれって“あの世”の世界での出来事のような気もするのだが、本当のところはどうなんだろう。
主演の香川照之は、確かに演技は上手いのであろうが、彼の演技次第ではもっと笑える作品になっていたかもしれないということで、個人的には少々不満が残る。ヒロインの小泉今日子は、公開当時42歳ということでさすがにかつてのような魅力は無いが、その分、演技力が増したかというと、まあ、ちょっと微妙なところですな。
ということで、実は黒沢清の監督作品を見たのは本作が初めてだった訳であるが、残念ながらあまり俺の趣味には合わなかった。まあ、元々、俺の苦手なホラー物で注目を集めた監督さんということで、そのへんの相性の悪さっていうものもあるのかもしれません。