チェ 39歳 別れの手紙

2008年作品
監督 スティーヴン・ソダーバーグ 出演 ベニチオ・デル・トロ、ヨアキム・デ・アルメイダ
(あらすじ)
カストロに宛てた“別れの手紙”を残してキューバを離れたゲバラベニチオ・デル・トロ)は、1966年11月、“ラモン”という偽名を使ってボリビアに入国する。当時のボリビアはバリエントス大統領(ヨアキム・デ・アルメイダ)による軍事独裁政権下にあり、ゲバラは、貧困にあえぐボリビア国民を救うため、キューバから応援に駆け付けた仲間たちとともに再びゲリラ活動へ身を投じるのだが….


チェ 28歳の革命(2008年)」に続くチェ・ゲバラの伝記映画の後編。

本作は、前編のラストで描かれていた1958年12月のサンタクララ市占領から7年後、1965年10月のキューバ共産党大会においてカストロが“別れの手紙”を読み上げるシーンから始まり、翌年11月のボリビア入国を経て、1967年10月、政府軍に捕えられたゲバラが処刑されるまでを描いている。

つまり、キューバ革命が成功した後、彼が政治家として活躍したエピソードは(前編で取り上げられていた1964年12月の国連演説を除き)すべてカットされ、革命家としての彼の姿のみが淡々と描かれている訳であるが、ハッピーエンドに終わった前編とは大きく異なり、ボリビア革命におけるゲリラ戦の状況は悲惨の一言。

何といっても、ゲリラ活動に対するボリビア国民の支持が得られないことが最大の問題で(まあ、それに関しては政府側の反共プロパガンダの他、ゲリラ組織の中核に外国人が多いことがマイナスに作用しているらしいのだが)、そのせいで日々の食糧にも事欠くような有様であり、当然、メンバーの士気も上がらない。中盤以降は政府軍との戦闘も連戦連敗と、ある種の戦争映画(?)に付きものの爽快感やカタルシスなんかは全く得られないうえ、最後はボリビア国民のために戦ったゲバラが彼等の手によって命を落とすところでキッチリ終わってしまう。

まあ、そんな内容にもかかわらず、133分という上映時間を飽きさせることなく、観客を最後まで惹きつけられたのは、ソダーバーグ監督の確かな演出力とベニチオ・デル・トロの熱演があったからこそなんだろうが、正直、前編での幸せな記憶無しにこの後編だけを見せられていたら、精神的にも相当きつかったものと思われる。

ということで、本来、この作品を独立した作品として評価することは困難であり、あくまでも前後編通して1本の作品と考えるべきなのであろう。ゲバラカストロ以外の登場人物の識別が困難なのも前編と同様であり、結構、鑑賞するのに気が抜けない作品でありました。