果てなき船路

1940年作品
監督 ジョン・フォード 出演 ジョン・ウェイン、トーマス・ミッチェル
(あらすじ)
英国籍の貨物船グレンケアン号では、スウェーデン出身のオリー(ジョン・ウェイン)、ベテランのドリストル(トーマス・ミッチェル)、物静かなスミティといった大勢の水夫たちが厳しい労働に従事していた。そんな時、第二次世界大戦が勃発し、グレンケアン号はアメリカの港で積み込んだ大量のTNT爆弾を、ドイツ軍から攻撃される恐れのある中、英国まで運ぶことになるが….


ジョン・フォードジョン・ウェインのコンビが、「駅馬車(1939年)」の翌年に発表した海洋ドラマ。

本作には、“TNT爆弾を無事に英国まで運べるか?”というテーマとは別に、“オリーは水夫稼業から足を洗い、家族の元へ帰ることが出来るのか?”という題名の由来にもなっているより大きなテーマがあるのだが、寡黙なスミティのことを他の水夫等がドイツ軍のスパイと勘違いするというエピソードを通して、この二つのテーマが見事につなぎ合されている。

このあたりは、原作となったユージン・オニールの戯曲の巧さによるものなんだと思うが、映像的なことをいえば、この舞台劇という設定に拘ったことが裏目に出ており、海洋ドラマに期待されるスケールの大きさが感じられない点が少々物足りない。

ほとんどのシーンがスタジオ撮影によるものであり、細やかな演出やライティング等によって海上の雰囲気を出そうとしている努力は見られるのだが、それらはあくまでも舞台劇での表現方法であり、映画的な表現としてはもっとそのものズバリといった映像を使用すべきだったのではないだろうか。

出演者では、オリー役のジョン・ウェインの名前がクレジットの一番最初に出てくるのだが、彼は海上のシーンではあまり出番は多くなく、実質的な主演者はベテラン水夫のドリストルに扮したトーマス・ミッチェルだろう。スパイと勘違いしたスミティに対する尋問シーンは彼の独壇場であり、ラストでオリーを無事救出し、これでハッピーエンドかと思わせた直後に訪れる悲しい末路もとても印象的だった。

ということで、ジョン・フォードとしては異色作に属する作品であり、流石に脚本の方はきっちりと最後まで良く練られているものの、映画的にはちょっと窮屈な印象が残ることも事実。いろんな意味でもう少し遊びがあっても良かったのではないでしょうか。