ブラウン神父の童心

以前読んだ「木曜日だった男」がとても面白かったので、同じG.K.チェスタトンの「ブラウン神父の童心」を読んでみた。

有名な「ブラウン神父シリーズ」の第一作目ということで12の短編が収められているのだが、初登場となる「青い十字架」におけるブラウン神父の位置づけは、主役(=名探偵ヴァランタン)でもその敵役(=怪盗フランボウ)でもない第三の男。しかし、終わってみれば、名探偵も怪盗もこのパッとしない外見の小男の知力に脱帽と、まあ、なかなか洒落た登場の仕方をしている。

各作品とも30頁足らずの短編のため、大ネタは見当たらないものの、「木曜日だった男」で見られたような“摩訶不思議な状況において至極合理的な回答が提供される”というパターンは健在であり、特にゴシックホラー的な雰囲気を有する「イズレイル・ガウの誉れ」の前半部分における盛り上げ方なんかは、とても上手い。

ということで、このシリーズの最大の魅力はなんといってもブラウン神父のユニークなキャラクターにあるんだろうが、彼が登場して以降の100年の間にありとあらゆるパターンの探偵像を見せられた今となっては、正直、新鮮味に乏しいと言わざるを得ない。まあ、有名シリーズの故、話のネタに1冊くらい読んでおいても損はないが、結論的には「木曜日だった男」の方がずーっと面白いと思います。