スピード・レーサー

2008年作品
監督 ウォシャウスキー兄弟 出演 エミール・ハーシュクリスティナ・リッチ
(あらすじ)
レーシングカーの設計者を父に持つスピード・レーサーエミール・ハーシュ)は、正にレースの申し子。レース中の事故で命を落とした兄レックスの遺志を継ぐべく、父の設計した“マッハ号”を駆ってレースで大活躍していたが、そんなある日、ロイヤルトン・インダストリーズという大企業からスポンサー契約の話が舞い込む….


タツノコプロ制作のアニメ「マッハGo Go Go」をウォシャウスキー兄弟が実写映画化した作品。

断っておくが、俺はタツノコプロの絵づらがあまり好みではないこともあって、今も昔も「マッハGo Go Go」のファンでは全くなく、本作も“この古臭いアニメをウォシャウスキー兄弟がどう料理するのか”という興味一点だけで拝見した次第。

で、開始早々に出てくる少年時代のスピード・レーサーの白昼夢の中、学校の机がレーシングカーに、教室がレース会場へとみるみる変身していく様を見せられた時点で完全に本作にのめり込んでしまい、その後は、もう、ウォシャウスキー兄弟のなすがまま状態。エンディングクレジットが終わるまでの135分間、至福の時を味あわせて頂いた。

何といっても、話の進み具合がとてもスピィーディーなのが最高に心地よい。あの登場人物の背景を使って別のシーンの説明をするっていう手法は俺は今回が初めての体験だったが、(まあ、ストーリーが単純なことにも助けられているんだろうけど)新しい表現方式として十分に成功していると思う。

また、肝心のレース・シーンは、オールCGというか、むしろスーパーマリオカートの世界に登場人物が入り込んでしまったと言った方が正解。確かに、車同士がぶつかり合う重量感とかは全くないんだけれど、逆にそれがクラッシュシーンの血生臭さみたいなものを完全に払拭してくれていて、単純に楽しめるところがとても良い。

そして、そんなイケイケ(=死語?)状態のストーリー展開の中、メカニックのスパーキーを含むレーサー家のホロっとするような家族愛を隠し味として臆面もなく使っているあたりの匙加減がこれまたお見事。また、スピード・レーサーの恋人トリクシー役で、あのビザールな美貌が売り物のクリスティナ・リッチが出ているんだけど、これが普通にとても可愛いことにもちょっと驚いた。

ということで、本作を日本で映画化していたら、とてもこんな素晴らしい作品にはならなかっただろうなあ、と思いながら見ていた。幸い、ウォシャウスキー兄弟は続編を作る気満々らしいが、本作の興行成績はあまり芳しくなかったようで、それが実現するかどうかは微妙なところ。もし、続編が出来たら必ず劇場に見に行きますんで、よろしくお願いします。